#16 ページ16
陽が傾き、西日が私達を照らす。
カランカラン、と耳に馴染んだ鈴の音が聞こえてきた。集合の合図だ。
「結局最後は寝ちゃったなぁ、良いところまで読んだのに」
「寝坊助Aは健在だな」
「あ、朝はちゃんと起きてるもん…」
「ギリギリだけどな」
「うぅ…」
何も言い返せない。キュッと口を閉ざせば数時間前の情けない表情はどこにもないレイがけらけら笑った。
少し癪で、爪先で脛を蹴ると悲鳴を上げて飛び跳ねる。今度は私が笑う番だ。
「い"ってぇっ!!おま、何するんだ!」
「あはっ、人の事笑うレイくんに仕返しです〜」
「お前だって今俺の事で笑ってるだろ!」
「さてはて、何のことかなぁ。ふふっ」
レイと軽くじゃれていればママが「コラ、仲良くしてね」とこちらを振り向く。レイはツーンとそっぽを向いて返事をして、私も緩く返事をした。
勿論ママが前を向いたら髪の乱し合いやほっぺの弄り合いが始まるわけだけれども。
「みんないる?」
ママが人数を確認しながらそう問いかける。いつもならみんな元気に是と答えるのだが、今日は違った。
「あれ?二人足りない?」
始めに気が付いたのはギルダだった。姿が見当たらないナイラとマルクの名を上げ、皆が心配そうに森の方向を見詰める。
一つ、こちらに駆けてきている子供の影があった。
「ママーッ」
「マルク!何かあったの?」
涙でぐしゃぐしゃの顔。マルクを抱き留めたママは事情を聞くとパカ、と懐中時計を取り出した。
あれだ。あれが例の発信機だ。コソリ、レイに耳打ちする。
「あの時計、かっこいいよね」
「…そーだな」
「そう思ってないのバレバレだよ。ママにおねだりしたら貰えるかなぁ」
「無理だろ」
「即答か」
割りとアンティーク物は好きだから、漫画で一目見たときからその全体のデザインが気になっていたんだ。まぁ手に入れる事も見る事も叶わないだろうけど。
しっかりと目的地があるかのように真っ直ぐ歩き出すママの背中を見送った。
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ベル(プロフ) - あー!好きです!!!!!!!!!更新待ってます!!! (2022年7月17日 2時) (レス) @page18 id: cae9acff5d (このIDを非表示/違反報告)
凛香奈 - 更新待ってます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - スターフォロワーさん» 閲覧、コメントありがとうございます。まだ未熟者ではありますがそう言っていただけて嬉しいです。これからも期待に応えられるようなお話が書けるように頑張ります!(イザベラの小説拝読しました…すこ…) (2019年7月18日 15時) (レス) id: 81db539243 (このIDを非表示/違反報告)
スターフォロワー(プロフ) - 圧倒的な語彙力に押し潰されそうになります。というか押し潰されました。とても素晴らしい作品で、色々と凄かったです。続きをるんるん気分で待ってます! (2019年7月6日 22時) (レス) id: 8493ee3401 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 白桜姫さん» コメント、閲覧ありがとうございます。楽しみを潰すような真似をしてしまい申し訳ありません。期待に応えられる事ができるお話を書けるように頑張ります。 (2019年7月6日 19時) (レス) id: 81db539243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lonely | 作成日時:2019年3月12日 18時