#開幕 ページ1
きゃらきゃらとした子供達の楽しげな声が聞こえてくる。きっともう朝ご飯の時間なんだろう。カーテンが閉められ、まだ薄暗い部屋の中で二度寝しようと思考を放棄する。
「――A!朝だよ!」
『……やだぁ』
「起きなきゃ怒られるのはAだけど」
『……ん』
否、しようとした。バン、と勢いよく開かれた扉。カーテンも開かれ、差し込む朝日に顔を顰めれば圧し掛かる誰かが笑う気配がした。
瞼を持ち上げれば、そこには可愛らしい笑顔のエマが。オレンジ色の髪が陽に透けてキラキラ光っている。綺麗だ。
手を伸ばした私に対して、仕方なさそうな表情を浮かべたエマは手を握って起こしてくれる。
ここはグレイスフィールドハウス――以後GFハウスとする――の一室で、私の服を取り出してくれている彼女はエマという名前の快活な少女だ。
私とエマを含め総勢39名の少年少女が暮らしているGFハウスは所謂孤児院で、運営及び私達を育ててくれているのがママと呼ばれる女性である。
まあぶっちゃけた事を言おう。
GFハウスは、孤児院とは名ばかりの人間養殖場である。6歳から12歳までの人間を食人鬼の為に育成、出荷している家畜小屋だ。
何でこんな事を知ってるかって?そりゃ勿論記憶持ち転生をしたからだよなぁ!
夢小説でよくあるネタだなぁ、程度にしか思ってなかったのに、当事者になるとはビックリだよね。
前世ではこの世界、約束のネバーランドという作品のファンであった私は推し達を拝めて毎日が幸せハッピー状態だ。祭りだわっしょい!
「A、はい!着替えて!」
『うん、先行ってていいよ』
「待ってる!」
はー、エマの口から私の名前が出る日が来るとは前世では考えた事もなかったな。諸事情で表情が乏しくてよかった。表情筋が仕事したら私は随分だらしない顔をしてるだろうから。
白色の清潔感溢れるシャツとスカートに着替え、最後にカーディガンを羽織ればすっかり眠気は飛んでいて、改めてエマにおはようと挨拶をした。
「おはよ。さ、早く行こ!もうお腹空いちゃった!」
『毎朝ありがとね、起こしに来てくれて』
「ふふっ、今更何を言ってるのさ!それに寝起きのAを見れるのは私の特権だよ?」
『特権って』
おかしな事を言うエマにくすくすと笑う。廊下でまだ眠たそうにしている弟達を抱っこして食堂へ向かった。
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ベル(プロフ) - あー!好きです!!!!!!!!!更新待ってます!!! (2022年7月17日 2時) (レス) @page18 id: cae9acff5d (このIDを非表示/違反報告)
凛香奈 - 更新待ってます! (2021年1月15日 18時) (レス) id: 11436a7db0 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - スターフォロワーさん» 閲覧、コメントありがとうございます。まだ未熟者ではありますがそう言っていただけて嬉しいです。これからも期待に応えられるようなお話が書けるように頑張ります!(イザベラの小説拝読しました…すこ…) (2019年7月18日 15時) (レス) id: 81db539243 (このIDを非表示/違反報告)
スターフォロワー(プロフ) - 圧倒的な語彙力に押し潰されそうになります。というか押し潰されました。とても素晴らしい作品で、色々と凄かったです。続きをるんるん気分で待ってます! (2019年7月6日 22時) (レス) id: 8493ee3401 (このIDを非表示/違反報告)
Lonely(プロフ) - 白桜姫さん» コメント、閲覧ありがとうございます。楽しみを潰すような真似をしてしまい申し訳ありません。期待に応えられる事ができるお話を書けるように頑張ります。 (2019年7月6日 19時) (レス) id: 81db539243 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:lonely | 作成日時:2019年3月12日 18時