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「っごめん、」
彼の怒ったような辛そうな顔を見て彼にぎゅっと抱きついて謝罪の言葉を述べた。「次そんなくだらねーこと言ったら許さねーから」とまた怖い顔して言うもんだから、こくこくと首を縦に振る。すると彼は掴んでいた私の腰を離した。
「メールで言ってたAの話したかった話ってこのこと？」
「あ…後もう一個ある」
「…お前突然嫌なこと言い出すからな、聞きたくねーんだけど」
「うっ、嫌な話ではないと思うけど…どうだろ」
「悩むなよ。嫌な話だってお前が思うなら言うな。それ以外なら聞いてやる」
「っ、じゃあ、多分違うから一応言っとくね…」
こんな形になっちゃったけど、本当は今日佐野くんに会ったらキスしてって言おうと思ってた。どちらにしても今日は佐野くんにキスして欲しかった。今まで恥ずかしがって勇気が出なくてごめん。キスって嬉しいものなんだね…恥ずかしいけど佐野くんのことが頭でいっぱいになって、すごく嬉しかった…。だからありがとう。
恥ずかしくて彼の顔は見れなかったけれどぎゅっと彼の頭を抱き抱えるようにして気持ちを伝えた。すると佐野くんは、私を勢いよく引き剥がすと私の両頬に手を当て今度は私の顔を掴んだ。
「！佐野、くん」
「なあ、今のもう１回言ってよ」
「え？」
「だからちゃんとオレ言われてないから」
「？何を」
「お前が今日オレに言おうとしてたこと」
「っ、」
「ちゃんとAに言われたい」
な？お願い…A
この人は本当にずるいと思う。
私がどうしたら彼にぎゅっと掴まれるような感覚になるかということを自分でよくわかっていてうまい具合にそれを駆使してくる。色っぽい視線が私の視線と絡まり合い、そんなの断れるわけがなかった。
「…ねえ、佐野くん……
キスして」
そう言った瞬間、彼は私に3度目の優しいキスをした。
「(一応あいつにも声かけとかねーとな)」
「(え？何の話？)」
「(さっきお前と口ぶつけたあいつ)」
「(ん！？彼が何！？)」
「(一応オレの女のファーストキス奪ってんだ、
「(さ、さっきと言ってることが違うじゃん！)」
「(ん？何？なんか文句ある？)」
「(いや…アレはキスじゃないってあれだけ言ってたのに)」
「(キスだとは思ってねぇけどなんかムカつく)」
あのクラスメートの無事をただ私は祈ることしかできなかった。
Fin
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作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月10日 23時
