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「わっ、な!なに!!こわい!!」
佐野くんは私の太ももあたりをしっかり両腕で抱え込むようにして持ち上げた。掴まるところを必死に探して咄嗟に彼の両肩に手を置いてバランスをとる。
私の顔の高さからは佐野くんの綺麗な金髪の頭部しか見えなくて彼がどんな表情をしてるのかはわからなかった。けれど動揺している私なんかを余所に彼はその体勢のまま空き教室の後ろに寄せられた机の方まで行き私を机の上に座らせるように下ろして口を開いた。
「もう拒むのなしね」
「えっ、なにを、」
「A…キスしていい?」
「は、何言って、」
「だから、キスさせて」
「っ!だ、ダメに決まってるでしょ!」
「なんで?」
「っなんでって!…どうしたの!いつもの佐野くんじゃ、」
「後悔してんなら、そんな後悔オレが潰してやる」
「っえ、」
「Aの後悔なんて、オレが忘れさせてやる」
「ちょ、ちょっと待って佐野くん!お、落ち着いて!」
「オレは全然落ち着いてるよ」
「お、落ち着けてないよ!冷静になろう!ここ学校だし誰か来ちゃ、」
「んなつまんねーこと気にすんな」
「や、ダメ!ちょっと待っ、」
「うるせぇ。お前の待ったはもう聞き飽きた」
出た。まただ。またあの顔だ。
この人は突然こんな顔をする時がある。
可愛く無邪気に笑うあの笑顔じゃなくて、同い年とは思えないくらいの大人びた顔。色っぽい顔だった。その顔で、その熱い視線で見つめられると私は彼から逃げたくなってしまう。けれど今はもう逃げ場なんてどこにもない。腰を彼の力強い右手でガシッと掴まれて机ぎりぎりのところまで前に引き寄せられる。すると自然と机の上に座っていて投げ出されていた私の足の間に彼は挟まるような形になった。咄嗟にスカートの前部分を抑えたけれど彼は全く気にしていないように左手を私の首裏に回す。佐野くんの顔が少しだけ私の顔より上にあり、首裏に回った手に力を入れグッと顔を近づけられてしまえば私と彼の距離はもうほとんど0に近かった。
その密着された彼との距離間に、体全体に熱を感じる。こんな状況に耐え切れるわけもなく少しでも彼から離れようと目の前の彼の肩を押してみるけどびくともしなかった。
「…往生際の悪い奴だなー」
「っ、あ、あの」
「本気で拒むんだったらオレを蹴り飛ばせよ」
「っ、そんなこと、」
「できないんだったらオレを受け入れろ」
「わ、わた、しは、」
「A、キスっていうのはこう言うことを言うんだよ」
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月10日 23時