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隆から逃げるようにしてその場を離れ私は同窓会の2次会の場であるカラオケにいた。明るいナンバーばかりが流れ、いい感じに酔っ払った同級生達の笑い声や音楽に合わせて皆で歌う声が聞こえ2次会は大盛り上がりだった。そんな宴の席の端っこで、盛り上がる人たちとは反対に、沈んだ気持ちを隠すようにひたすら濃いめのお酒が入ったグラスを私は1人で傾けている。所謂ヤケ酒ってやつだ。
自分の体質的にあまりお酒が強くないことはわかってる。だからいつも1,2杯しか飲まないようにしてたし、飲むとしても「オレの前だけならいいよ」と酔っ払った私をきちんと介抱してくれる隆がいるときだけ。隆もいない場でこんなにもお酒を喉に流し込むように入れていくのは初めてだった。
「…A、大丈夫か？」
「…は、やまくん？」
「顔赤…。無理して飲むなよ、ほら水」
「….いやだ、こっちがいい」
不意に肩を叩かれ、視線を上げれば心配そうに私の顔を覗き込む葉山くんがいた。彼は私に水を飲ませようとグラスを差し出してきたが、それを断りまたウイスキーの入ったグラスへと手を伸ばす。このお酒が強いか弱いかなんてもうわからないくらいに私は酔っ払ってる。そして気持ち悪い。
「ダメだって！どうしたんだよA」
「…んでもない…なんでもないよ」
「何でもないって顔してないじゃん。とりあえず酔い覚ましに外出ようよ。俺もついていくし」
「…あーー頭痛い、動けない」
「そんだけ飲めば当たり前だよ」
葉山くんは、私の肘あたりを掴み無理矢理立たせると肩を抱きながら部屋を出た。フラフラして何も考えられなくてとりあえず彼の後をついていく。
カラオケ屋から一旦出て店の目の前に置いてあったベンチに腰掛ける。「もたれかかっていいよ」なんて優しい言葉をかけてくれる彼に首を振って断った。酔っ払った私の酔いを覚まそうとしてくれてるのはありがたいのだけれど、今は1人でいたいし何より隆以外の男の子と2人きりになることはあまりしたくない。
「っ、ごめん…大丈夫、大丈夫だから」
「Aの大丈夫は大体大丈夫じゃねーんだよな。これでも元カレなんでそれくらいわかるよ」
「…たしかに、少し飲みすぎた…かも。今日はこのまま帰ろうかな…お金渡すから払っておいてくれる？」
「いや、金は気にしなくていいから早く帰りな。タクシー呼ぶ？」
「…ううん。ちょっと頭冷やしたい。歩いて帰る」
そう言うと葉山くんは少し怒ったような顔を私に向けた。
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作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月10日 23時
