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「何?久々に元カレと再会して…昔の気持ち盛り上がってんの?」


淡々とそう言った隆に怒りの感情が溢れてくる。何を言ってるんだろうこの人は。いつもの隆だったらこんなことは絶対言わない。私の話を聞かずに責め立てたり、こんな笑えない冗談を言ったりしない。


「……それ本気で言ってるの?」

「あぁ」

「気持ちが盛り上がるって、私は彼のことがまだ好きだって言いたいの?」

「…そうだよ」

「っ、私が…もしも私が、そうだって答えたら隆はどうすんのっ…?」

「……もし、そうなら…オレと別れて好きなやつのところに行、」



パチン!!!



最後まで聞く余裕なんてなかった。「別れ」というワードで咄嗟に体が反応した。右手の手の平がジンジンする。腕全体が痺れてるような感覚に陥った。人を叩いたのなんて人生初めてだし、ましてや隆に対してこんなに怒りを覚えたのも初めてだった。
痛かった。叩かれた隆が痛い思いしてるのは当たり前だけど、叩いた私も…手も心も、全部が痛かった。


「っ…A?」


驚き顔の隆の顔が滲んで見えなくなったところで自分が泣いているということに気がついた。人の話も聞かないで勝手に話を進めて、挙句の果てにあっさり私と別れるとこの人は言った。彼と過ごした時間は長い。一緒に大事に作り上げてきた時間や思い出も、育んできた気持ちも、全部この人はそんな簡単に手放せるのだろうか。私はできない。そんなことしたくない。もしも隆が私と離れたいと言ってもきっと私は離れられない。けれど彼は違う。私が離れそうになったら、あっさり離し別れを選べる。その気持ちの差がとにかく痛くて涙は止まらなかった。



「…私が好きなのは隆だって言ってんじゃん。隆に
決まってるじゃん!!」

「…っA、オレは!」

「…隆は、私と別れたいの?」

「は!?…違う!違ぇよ!!!そうじゃなくて、」

「だったら!なんで別れるとか言ったの!?別れる気もないのに何で別れるって言ったの?」

「…っだからそれは、」

「もしも、私と別れる気が本当にないんだったら、さっきの発言はおかしい…!絶対におかしいよ!!」


泣き叫ぶようにそう言えば、目の前の彼は罰の悪そうな顔をした。表情的には「やっちまった」というような感じ。けれど理由はどうあれ、彼の言った一言は言ってはいけない一言だったと思う。やっちまったじゃ済まされない。そんな簡単に別れを言い出せる彼のことを私は許せなかった。

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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月10日 23時

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