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「どうしてここに…」
そう聞いた私に隆は何も答えず、目の前にいる風間くんの方を向いた。
「何か用っすか?」
「え?用っていうか…」
「特に用ないなら悪いけど、こいつ連れて帰ります」
そう言って隆は私の手を取ると私の静止の声も聞かずに彼らに背中を向けて歩き始める。
「ちょ、ちょっと待って隆!」
何度声をかけても止まってくれない隆に、繋がれた手を振り払って大きな声を出し呼び止めた。すると、ようやく隆はこちらを向き止まってくれたが未だに隆の眉間には皺が寄っていて、怒ってるということに今更気づいた。
「…早く帰るぞ」
「待ってってば!私これから2次会に参加しようと思ってたところで」
「は?2次会?」
「…うん。言ったでしょ?もしかしたら2次会行くかもって」
「…別にAが行かなくてもよくね?」
隆のそのセリフは実に彼らしくもないセリフだった。
私が行かなくても良いとはどう言う意味だろうか。確かに私がいてもいなくても、勝手に2次会は盛り上がるだろうし、強制ではないため行く必要はない。けれど、久々の再会に胸を躍らせ楽しかった気持ちをどうして隆に冷まされないといけないのか。
「…どう言う意味で言ってるの?」
「意味なんてねーよ。ただA、幹事ってわけでもないだろ?2次会なんて行く必要ないよ」
「…なんで、隆がそれを決めるの?行かないにしてもちゃんとみんなに帰ること伝えなきゃダメじゃん。こんな連れ出し方してどういうつもり?」
「…何でAが怒ってるんだよ」
「怒ってないよ!怒ってるのは隆でしょ!あんな風にいきなり来て、風間くん…あ、さっき私が話してた彼にも、他のみんなにも失礼すぎる」
同窓会に行っていることを知っている隆から、電話があったこと自体にも驚きだったけれど、まさか彼がこんな身勝手なことをするなんて思いもしなかった。私の知ってる彼は大人で、周りをよく見れて、不必要に人にあんな態度を取る人じゃない。一体彼は何に怒っているのか。
「何が失礼なんだよ。彼女が他の男にデート誘われてるの見てそのまま行かせられるわけないだろ」
「デート!?何言ってるの?」
「さっきの男、Aのこと誘ってたよな?」
「っ違うよ!それは、」
「…あいつがAの元カレ?」
「えっ…?」
隆のこと言ってることに困惑し戸惑ってる私に急にピタリと言い当てられたそれ。
驚いて目を見開く私に、隆は「やっぱりな」そう言って自嘲気味に笑みをこぼした。
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月10日 23時