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「…信じてないわけじゃ無い。Aはそんなフラフラするような奴じゃ無いこともわかってるけど…」
「三ツ谷はAの元カレに敏感すぎるよ」
「…アイツが初めて好きになった奴って言われると、情けねぇけど心配になる」
そう言って時計に目を向けると指針は丁度午後8時を回ったところを示していた。朝出かける前にAとした会話を思い出す。
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「A…今日何時に帰る?」
「今日?んー?夜の6時スタートだから8時には終わるんじゃないかと思うけど…」
「あ、じゃあオレそのくらいに仕事終わらせて迎え行くわ」
「え!いいよいいよ!お迎えなんて!もしかしたら2次会とかあったら私も行く流れになると思うし」
「…いや、でも、」
「隆も仕事忙しい時期なんだから、私のことは気にしないで仕事に集中して!」
「…だけど」
「もう、心配性だなー!ちゃんと明るい道通るし、最悪タクシー乗るから大丈夫だよ!」
「(っそうじゃねーんだよ)…ん、わかったよ…」
「ちゃんと帰る時連絡するね!飲みすぎない、遅くならない!約束します!」
「…おう、絶対な」
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そろそろ1次会が終わるくらいの時間だ。真面目な名前のことだ。解散するにしても2次会に行くにしても、きっとここで一度オレに連絡を入れてくるはず。そう思って携帯のトークアプリを開いて彼女からの通知を確認するが来ていなくて閉じた。そしてまたすぐにアプリを開き同じように待ってみるが中々こない。何してんだ、A
「重症だね…そんなに気になるなら行ってきなよ」
「は?どこに?」
「ん?Aのお迎え」
「…出来るかよ、そんなダセー真似」
「別にダサく無いでしょ?彼女を心配して迎えにきたいい彼氏じゃん」
「普通引くだろ」
「視線は痛いだろうけど引かないよ。ついでにその三ツ谷の気になる元カレにも、Aには三ツ谷がいるっていう牽制してくればいいじゃん」
「………迎え拒否られてんの行ったら流石にウザくね?」
「こんなところで仕事も手につかないで、ウダウダしてる男よりかはウザくない」
柚葉のナイフのような言葉に若干傷を負うも、「早くしないと店移動して次の行先わからなくなるよ」そう柚葉に促されて急いでオレは立ち上がった。椅子にかけてあった上着やら荷物を乱暴に抱えて仕事場を飛び出す。「戸締りは任せとけー」という柚葉の声が背中越しに聞こえ、心の中で感謝しつつ勢いよくバイクに跨った。
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月10日 23時