おはなしおもちゃ箱【リクエスト短編集】

──── ＊ ページ7

動揺しながらも、なんとか言い訳をしようとするA。

「ふふっ…」

電話越しであたふたしている可愛らしい彼女の姿を想像して、思わず笑ってしまった。

［な、なんで笑うの…］

「いや、ごめんごめん。可愛くて、つい…」

［もぉ〜!!］

ちょっと拗ねている様子も可愛らしくて、つい弄ってしまった。
Aと話をするだけで、さっきまであんなに暗い気持ちだったのが嘘のように明るくなって、いつの間にか俺はAと一緒に笑っていた。

少し落ち着いてから、俺はまた口を開いた。

「ごめんな。寂しい思いさせてもうて…」

改めて謝罪を口に出すと、今自分のそばに彼女がいないという現実を突き付けられたような気持ちになって、また虚しくなった。

そんな俺に、Aはこう言った。

［確かにさっきまでは1人でちょっと感傷的な気分になったりもしたけど、でも私はこうやってセンラの声を聞いているだけで、センラをすごく身近に感じられるの］

Aはゆっくりとした口調で俺に語りかける。

［どんなに離れていても、私のそばにはいつもセンラがいてくれる。だから私は大丈夫］

Aに寂しい思いをさせてしまっていることがずっと俺の中で気がかりだった。

でも、彼女は俺が思っていたよりもずっと強くて、その一言で俺の今まで抱えていた不安を取り払ってくれた。

［センラもそう思うでしょ…??］

Aのその問いに、俺は自信を持って答えられた。

「そうやな」

俺の答えを聞いて、Aは満足そうに笑った。

しばらく2人で話をしていると、

［あっ!!雪が降ってる!!］

とAが言うので俺もふと窓の外を見れば、暗い空からふわふわと白い雪が舞い降りて、辺り一面を白く染めていた。

「ほんまや…こっちも降っとるわ」

［え…!!ほんと??…センラと一緒に雪が見られて良かったぁ…］

電話越しでも、とても嬉しそうなのが伝わってくる。

こんなにも幸せな気持ちにさせてくれる彼女の声。

あぁ、でもやっぱり、彼女の笑顔が、体温が恋しくてたまらないと思ってしまう俺は、欲張りなんだろうか。


「ねぇ、A」

［ん…??］

「愛してる」

［私も…あ、愛してる］


2人の甘い幸せな時間は、ゆっくりと俺を微睡みの世界へと誘(いざな)う。

たくさんの鮮やかな光が暗い部屋を暖かく照らし、 しんしんと降り注ぐ雪は2人の想いのように降り積もっていた────





〜完〜



.....................................................

──── あとがき Box４→←Box４ ブルークリスマス【センラ】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す