電話じゃ足りない 〈川尻蓮〉 ページ45
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時計の針の音だけが鳴り響く部屋。
何も考えずにSNSチェックをしながら、彼からの連絡を待つ。
……今日も無理かな。
私の彼は、今大注目のグローバルアイドルグループの一人。
彼のデビューが決まった時は号泣して喜んだけど、あの時の私はそれからが大変だなんて思いもしなかった。
今日も、会うどころか電話すら出来ない。
帰宅すると疲れてすぐ寝てしまうようで、この前電話したのは一週間ほど前。
最後に会ったのなんて、いつだろう？と一瞬考えてしまうくらい会っていない。
いつもテレビ越しに彼…蓮を見て、住む世界が違うなあと気付かされる。
…もう、寝ちゃおう。夜中はネガティブになりがちだ。
布団に潜って電気を消す。はあ、と溜息を一つ吐いて目を閉じようとすると、光る携帯。
電話だ。名前を見た瞬間、眠気なんて吹き飛んでしまう。
『もしもし蓮？』
「A？ごめん寝とった？」
『ううん、寝る準備はしてたけど起きてたよ』
今寝ようとしてましたなんて、絶対言わない。一秒でも長く、話していたい。
「Aと最後に会ったのいつやったっけ？」
『いつだろう…もう結構前だよ』
「さすがに会えなさすぎて寂しいな〜」
笑いながらそう言った蓮に、きゅんとしてしまう。
『可愛いこと言わないで』
「はは、Aは？」
『んー？』
「Aは、俺に会いたい？」
分かってるくせに、言わせるなんて意地悪。
…でもこれだけ会えないし話せないと、蓮も不安になるのかな？
『…会いたいけど、蓮たち今大事な時期だし。』
「そうやね…」
『蓮に無理はさせたくないから、大丈夫だよ』
「……ごめんね、俺が大丈夫じゃないみたい。」
"外見て？"
その声に慌ててカーテンを開くと、見慣れた背格好の彼が目に入る。
慌てて玄関を出て蓮の元へ走った。
電話じゃ足りない
「こんな夜中にごめん」
『び、っくりした…。大丈夫なの？疲れてるんじゃないの…？』
「疲れよりAに会いたい方が勝っちゃった」
『もう…』
「実は明日オフやけん、一緒に過ごしたいなと思って来たんだけど、いや？」
『…嫌なわけないじゃん、一緒にいたい』
「ふふ、良かった。明日はいっぱい甘えていいからね」
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これが恋ってやつですか？ 〈木全翔也〉→←きっと、ずっと 〈大平祥生〉
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作者名：すい | 作成日時：2020年4月28日 4時
