なくした過去は取り戻せばいい 〈佐野文哉〉 ページ41
※私じゃあなたを、癒せない の続編です。
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〜佐野文哉side〜
その日帰宅すると、部屋は真っ暗で。
昨日までは明かりがついていて、迎え入れてくれる人がいたのに。
昨日までの事が嘘のようだった。
「…A、いないの？」
返答はない。
いつもと変わらず、綺麗に整頓された部屋。掃除や洗濯もちゃんと済ませてあった。
俺は無言で携帯をポケットから取り出し、迷うことなくAに電話をかけた。
機械音が永遠に鳴り響く。
………出ない。まさか、着拒？
「……そんな、」
正直、冗談だと思ってた。俺が帰宅するまでは絶対にいるっていう、根拠の無い自信。
でも、現実はそう甘くはなかった。
電気をつけないまま、ソファに座りもたれ掛かった。
Aは毎日、こんな思いをしてたのかな
帰ってきても迎え入れてくれる人なんかいなくて、ずっと暗くて広い部屋で一人過ごしてたんだろうな。
初めてAの気持ちになって考えて分かった。謝る資格なんかないけど。
いつものように慣れた名前をタップする。先程と違い、すぐに繋がる電話。
「なに、もう寂しくなったの？」
「違うよ。……もうやめよう、こんな関係」
.
俺は家から飛び出して、Aを探す。
俺と同棲してたから、部屋なんかないはずだ。
Aが行きそうなところ……全然知らない。
俺、何年Aと一緒にいた？最後に興味を持ったのは、いつだった…？
そんな時に光ったスマホ。額の汗を袖で拭って開くと、Aの友達からのメッセージだった。
文哉くん今どこにいる?
文哉A探してる
電話できる?
文哉いいけど
すぐにかかってきた電話。
「Aのこと探してるんでしょ？」
「うん、何か知らない？」
「……私の家にいるよ」
「まじか、ありがと」
「あの人とはどうなった訳？」
「…終わったよ、もう会わない」
「…そっか、良かった。A相当傷ついてるから。これからはちゃんと優しくしてあげないとダメだよ？」
「わかってる、そのつもり」
電話を切ってから、Aの友達の家へ急いだ。
.
続
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作者名：すい | 作成日時：2020年4月28日 4時
