ごめんね、ありがとう 〈大平祥生〉 ページ4
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「また泣いてる」
『泣いてない』
一つ溜息をこぼして、私の隣にしゃがんだ祥生。
「で、今回はどうしたん」
『…女の人と、楽しそうやった』
「また嫉妬？」
『またって何』
"また"っていう言葉に腹が立って、祥生を睨みつけた。
私の睨みは効かず、窓の外を見続ける祥生。
…私の彼氏は、誰にでも優しい。
一年片思いして告白してやっと実った想いだったけど、平気でボディタッチとかもしちゃう系男子。
嫉妬とか辛い思いとか、もう慣れた…はずなんだけどな。
実際に見てしまうと、しんどくてその場にいられなかった。
「ほら授業始まんで、立って」
『無理。サボる』
「Aさん？単位落ちても知らんで？」
『まだ余裕あるし』
祥生はまた溜息をついて、今度は床に座った。
あ、これはきっと付き合ってくれるやつだ。
『祥生くんは優しいですね』
「バカにしとるやろ？ジュース奢りで」
『…一緒にいてとか頼んでないし』
「顔に"一人にしないで"って書いてあるけどな」
祥生には何でもお見通しだった。
今、この状況で一人にされたらきっと心が折れてしまう。いつ教室に戻れるか分からない。祥生の優しさは、いつも私の心を埋めてくれる。
『祥生のこと好きになったら良かったんかな』
「………冗談で言ってるなら、簡単にそういうこと言わん方がええで」
ごめん、と言うと、「まあ泣きたくなったら話くらいは聞くし」と私の髪をわしゃわしゃと撫でた。
ごめんね、ありがとう
実は知ってるんだ、祥生が私のことを好きだってこと
その思いを知ってるくせに甘えてしまう私は、嫌な女だ
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作者名：すい | 作成日時：2020年4月28日 4時
