私じゃあなたを、癒せない 〈佐野文哉〉 ページ27
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【今日帰れない】
そう彼から連絡が来たのは、10分程前。私はどう返事しようかと携帯と睨めっこしていた。
彼の朝帰りが多くなったのは今に始まった事ではない。
２〜３ヶ月くらい前から私への態度が変わり、朝帰りが増えた。
もう潮時かな、なんて考えていた時に鳴ったスマホ。
画面に表示されていたのは私の親友で、私は迷うことなく電話に出た。
『もしもし、どうしたの？』
「A、急にごめんね。文哉くんのことなんだけど…」
親友は私と文哉の関係を知っている。
文哉の事を紹介してくれたのは親友で、困ったことがあった時はいつも相談させてもらってる。
文哉が浮気している事も、もちろん知ってる。
『うん、今日もあの人と一緒でしょ？笑』
「知ってたんだ…言おうか迷ってたんだけどさ」
『ん、教えてくれてありがとう』
「そういえばこの前言ってた事なんだけど」
『この前？何か言ったっけ』
「別れる、って…。」
"次朝帰りしたら文哉とは別れる"
そうだ、この前親友と飲みに行った時に言ったんだった。
次が、今日だ。
『うん、別れる』
「……そっか」
『もう、私も辛いんだ』
浮気相手といる時は幸せそうに笑う文哉を見るのが。
悲しいことに、文哉と浮気相手は美男美女でお似合いだからこそ、尚更辛い。
「無理しないでね。いつでも話聞くよ」
『いつもありがとね』
通話を終えると、先程まで睨めっこしていたメッセージの下書きが画面に映し出される。
話したい事はいっぱいあるのに、何て言えばいいか分からない。
…違う。文章じゃない。
顔を見てしまうと思うように言葉が出てこないと思うから、せめて…電話しよう。
.
続
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作者名：すい | 作成日時：2020年4月28日 4時
