COLORS (ページ29)

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あ、そうだ、連絡しとかなきゃ。
携帯を取り出し電話をかける。
はいはい、と出た今回の幹事である樹の後ろで、みんなの盛り上がってる声。

「北斗と店の前で会ったんだけど、調子悪そうだから送っていくね。俺もそのまま帰る、ごめん」
「わかった、またね」
「ん、みんなによろしく」
樹の様子からみて、立ち聞きしてしまったことはバレていないと思う。ひと安心。

しばらくタクシーに揺られ、自宅のマンションに着いた。
北斗の親友は遊びに来たことあるけど、北斗が来るのは初めて。

「お腹空いてる？」
エントランスを通過し、エレベーターへ向かいながら聞く。
北斗は落ち込んでしまっていて店からずっと無言だった。

「……さっきはすいてた」
「なんか出前とろっか。中華？お寿司？」
「ジェシーはなに食べたい？」
「えーっ、なんだろうなあ。あ、フレンチトーストみたいなやつ！こないだ北斗が作ってた」
「ふふ、ドラマの？今日は無理だよ、材料無いでしょ」

北斗に笑顔が戻ったけれど。
なんだかぎこちない。

そのまま軽口を叩きながら部屋へ入り、一緒にああだこうだ言いながらメニューを決め、出前の注文を済ませる。

北斗は急にご機嫌になった。
口数も多いし、よく笑う。
俺もそんな北斗に引っ張られるようにテンションが上がる。

出前が届いてご飯を食べている間もご飯を食べ終わっても、俺たちはたくさんしゃべり続けた。
話題に中身なんてない。
ただふざけて笑って楽しい時間を過ごした。

食事の後片付けを済ませ、コーヒーをテーブルに置きソファーへ座る。
すると突然、隣に座っていた北斗が抱きついてきた。

「ジェシー、ありがと」
「ん？なにが？」
「今まで。付き合えないって言ったのに優しくしてくれてありがと」

今まで？
それじゃまるでこれからは……。

「明日からは距離感近くなっちゃってたの、戻すね」

俺にぎゅっと抱きついてて表情は見えないけど、どんな顔して言ってんの？
なに勝手に終わらそうとしてんの？

北斗を引き剥がし、顔を見る。
にこっと微笑む北斗。

無理して笑わないで。
痛い。胸が。北斗もそうでしょ？