Emotion【SHO.H】 (ページ10)

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私は欲張りだったのかもしれない。
廉という彼氏が居ながら
他の男に興味を持つこと自体が間違っていたのかもしれない。

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次の日の昼休みも彼が好きにすればいいと言ったものだから''彼の城''に訪れた。
けれど彼の姿はなかった。てっきり昨日の様子から彼は来てくれるのではないか少し期待していた。

鍵は開いていたから中に入って、
昨日、彼が熱心に話していた本を手に取った。

‘‘未熟な愛は言う、
「愛しているよ、君が必要だから」と。
成熟した愛は言う、
「君が必要だよ、愛しているから」と。’’

彼の難しい発言の中で、唯一この言葉は頭に残っていた。彼の遊び人気質な様子からは彼が哲学的な男だとは誰も思わないだろう。私も驚いていた。

正直に言ってこの言葉の意味はよくわからなかった。彼は私に「わからんやろ？」と聞いてきたが、果たして彼にはこの意味が理解できているのだろうか。

結局彼は来なかった。
やはり昨日はただの気まぐれか。
仲良くなれると思ったのは私だけで会ったかと落胆して私は部屋を出た。

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その日の帰り道、舞美は委員会があるからと言って私は１人で帰ることになった。

昼間からあやしいなと思っていた予想が見事に的中し、外は雨が降っていた。
雨が降ると、あの小道は足場が悪くなるから気をつけろ。と西畑くんが言っていた。

地を確かめるように歩くと、本当だと思った。
暫く続く小道を黙々と歩いていると
どこか見覚えのある体格の良い男が林に入っていったのを見た。

こんな雨の中、傘もささずに。
もしかしたらと思った。
思わず足が向かう。

「濡れてる。こんな雨なのに、阿保なの？」

私の予感は的中した。
その男は平野紫耀であった。

紫「またおまえか。」

彼は私に気がつくと、傘に入れろと手招きで示してきた。それが人にものを頼む態度か。仕方がなく傘に入れてあげると彼は私の傘を掴んだものだから、あたかも私が入れさせてもらっているような状態になる。

「今日、来なかったじゃん」

紫「あー、わり。用事できちゃってな」

故意で来なかったわけではないのかと少し安心した自分がいた。

「ねえどこに行くの？」

彼が傘を持っているものだから私は彼が向かう所へいやでも行かなければならない。

紫「寒いやろ、ちょっと休んでけばええ」

どうやら彼は帰路の途中だったようで
私を家にあげてくれるつもりである。
私は何も言わず彼についていった。