Emotion【SHO.H】 (ページ34)

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紫「ええよ」

「お着替えは終わりました？」

紫「おまえ馬鹿にしとるやろ」

この1ヶ月。
紫耀と話さなかった1ヶ月が嘘みたいだった。
こうやってくだらない会話ができるなんて思いもしなかった。

紫「で、なんやっけ」

「あ、うん。今日の体育..」

紫「酸欠か」

紫耀のしてやったりの顔。
うっ...わぁ..ずるいなあこの笑顔。形成逆転ってわけか。

「舞美に紫耀が運んでくれたってきいたから」

紫「そんなん当たり前やろ。いきなり人倒れたら誰でも運ぶわ」

‘‘誰でも運ぶ’’
の..か。そっか、当たり前だよね。
馬鹿みたい..(笑)自惚れざまあみろってことか..

紫「何落ち込んでんねん」

「別に落ち込んでない」

紫「嘘やって、お前だから運んだ」

そうやってまた上手に笑うんだから。
ずるいなあ、本当。

「ありがと」

紫「んー」

あ、会話止まっちゃった。
話しにくいわけではない。むしろ話しやすい。
けれどいざ紫耀と何を話せばと聞かれるとよくわからない。

紫「なんか、出してもらった？飲み物」

「あ、いや」

紫「何飲みたい？」

「大丈夫だよ。すぐ帰るから」

また、止まっちゃった。
何このぎこちない感じ。やっぱり1ヶ月ってスランプは大きい。

紫「なんであんなんなるまで走ってたん？」

「なんとなく」

貴方と廉のことで頭がいっぱいで
ただガムシャラになってたなんて言えない。

紫「お前って変な奴」

「そんなこと..」

「...そうかもね」

きっと私って変なんだ。欲張りだ。
普通の人なら好きな人が2人なんて、ましてやその両方を望んでるなんてありえないことなのだ。

「帰ろうかな..」

紫「ここまで何で来た？」

「電車」

紫「もう遅いから送る」

「いいよ」

紫「道端で倒れられてもこっちが困んねん」

そうして紫耀に
紫耀のオートバイで送ってもらうことになった。

紫「しっかり捕まり」

「ん」

変な話だ。かれこれ1ヶ月も距離があって。
けれどこんなに簡単にあっさりと
今までのことが全部泡になるように。

それに加えて紫耀の背中に捕まって
紫耀のバイクに乗せてもらうなんて
なんかさ、もう。

風に吹かれるたび香る紫耀の匂いと
紫耀の大きい背中を見ていると
なんかもう全部が馬鹿馬鹿しくおもえた