Emotion【SHO.H】 (ページ17)

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紫「帰ろ」

あれから毎日平野くんは学校に来て
ゴールデンウィーク前最後の放課後、
私の席に当たり前のように訪れて
当たり前ように私の腕を掴んで引っ張る

「ちょっと！」

振り払おうとしても男の平野くんの力には敵わなくて
後ろを振り返って助けを求めようとしても
西畑くんと舞美はニヤニヤしてるし...。

もう...なんなの？

.

「ちょっと一回離して」

紫「離したら逃げるやろ？」

当たり前じゃん。下駄箱までそのまま連れてこられたけど私大体平野くんのものじゃない。

「逃げないから、腕掴まれてると痛いの。」

平野くんは私の顔を見つめる
そしてそのまますっと手を離す

私はその一瞬を見逃さず、走り出す。
私のこと信じたんだ。
阿保だ、馬鹿だ、平野紫耀。

私は一気に校門へ向かう
昔から運動神経は良くて足は速かった

.

...けれど甘かった
平野くんはまるで獲物を追いかけるライオンのように私を追う。
私は追われる。

足....速いとかそんなんずるいじゃん

校門を出る頃にはアッサリと平野くんに捕まった

.

紫「嘘、ついた」

「しょーがないでしょ！平野くん勝手なんだもん！」

紫「俺が何？」

「自分勝手！自己中！馬鹿！阿保！」

きっと気づいていたんだこの頃から
こうやって感情的になるのは
この感情を押し殺さないといけないという使命感におそわれていたからで

「私言ったよね？彼氏がいるって」

紫「それがなに？」

そうでもしないと
平野くんに丸め込まれそうで

「困るの！」

紫「俺に惹かれてるから？」

なんでそんな簡単に
なんでそんなに自信を持ってそんな発言ができるのだろう。

「....違うよ」

これ以上、平野くんの近くにいれば
もっと平野くんに惹かれていく

いまならまだ間に合う、大丈夫。

.

紫「好き」

ああ、そうやって。
なんてタイミングで、どーゆう神経してるわけ。

「...」

曖昧だった記憶の ''好き'' は
今、確信の ''好き'' に変わって

あの言葉も、全部本気だったのかと思うと
なんだか笑えて。

紫「なんで泣くん」

勝手だからよ。
掻き乱して、ぐちゃぐちゃにして、鷲掴みにして。

ずるい、君はずるいよ。

「帰る」

紫「送る」

「いい」

私は強引に腕を引き払って歩く。
今度はもう、追いかけてこなかった。

そう。明日から廉がくるの。
この平野くんへの気持ちは一時的な感情に過ぎなくて廉のことみたらすぐ忘れられるんだから。

早く明日になって廉でいっぱいになりたいの。