Emotion【SHO.H】 (ページ11)

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大きな門をくぐり、足を踏み入れることにも恐れが多いこの屋敷に少し緊張していた。
豪邸の中は私が想像していたものより遥かに上をいっていた。

広い。とにかく広い。
彼は唖然としている私に「こっち」と手招きをする。

室内にも西洋的な雰囲気が漂う家具や絵画がたくさんあった。本当にお金持ちっているんだ...。

紫「ほれ、座り」

彼は私をだだっ広い部屋にポツリと置かれている高そうなソファに座らせると千鶴さんという人に温かいものとタオルを持ってきれくれと頼んだ。

「漫画の中の世界みたい」

紫「ははっ、そうやなあ」

「ねえ、ここに傷あるよ」

私は彼の頬を指差した。
よく見れば傷の上は少し腫れていた。

紫「あー、今日やったやつやこれ」

「喧嘩？」

紫「そんなとこかな～」

彼は私の質問にはハッキリ答えなかった。けれどきっとこの傷は喧嘩でもしないとできない。
この後千鶴さんが部屋に来てタオルと紅茶を持ってきてくれた。冷えた体にはありがたいものであった。

「ねえ、やっぱり血が出てる。」

紫「こんなんほっとけば治るやろ」

「だめよ、手当てしてもらいなさいよ」

紫「俺、しみるのいややねん」

なんだそれ。
彼が手当を嫌がる理由が余りにも可愛くて私は思わずポカンとしたあと笑いが止まらなかった。

紫「なんで笑うねん」

「しみるのが嫌とか、小学生みたい(笑)」

女好きだし喧嘩もする
けれど博識で、少し抜けている
本当に天真爛漫な王子様だ。

「私がやってあげるから」

そして彼には何より優しさを感じた。
強引で傲慢な彼の言葉や態度にも
どこか温かさがあった。

紫「なんやねんこれ」

彼の頬に私が持っていたハートマークのついた絆創膏を貼ってあげた。

「これしかなかったのよ」

紫「ハートやん」

「可愛いでしょ？」

紫「お前俺こと好きやろ？」

「馬鹿なこと言わないで」

紫「俺はお前のこと好きやで？」

「それは困るわ」

紫「俺、この街の王子様やで？彼氏なんて捨てて俺にせえ」

俺にすれば？とか俺じゃだめ？とかではない、‘‘俺にせえ’’なのだ。けれど彼の傲慢な態度にももう慣れた。

「私の王子様は地黒で細身で高身長なの。貴方は色白でがっしりしてて背は低いでしょ？」

紫「背、気にしとるんやから」

「あ、ごめん」

彼はソファから立ち上がりじっと私を見下ろした。

紫「...そろそろ帰り、親心配する」

ああ、なんだそれだけか。
何か言いたげに見えたのは気の所為だった。