＿＿＿＿９１ ページ43
You side.
カタカタとキーボードを打ち込む音だけが定時を過ぎた社内に響き渡る。
『Aさん、』
資料を消してしまった社員がギリギリまで手伝ってくれたけど、さすがに定時を回って3時間も過ぎていて。
「あとは1人で大丈夫だからもう帰っていいよ」
『え....でも、』
「もう少しで終わるし！私は大丈夫だから！」
「ね？」と声を掛けると泣きそうな顔で「すみません」と呟いた。
いつも小さなミスで迷惑をかけている分、出来ることは自分の力でどうにかしたかった。こればかりは私の意地だった。
『お先に失礼します、』
「うん！お疲れ様！」
1人になった社内。
静かすぎる空間に、急に体が重くなる、
「....嘘ついちゃった」
3日かけて仕上げた資料がもう少しで終わるわけがない。
ふぅ、と一息吐いてグッと伸びをした。
「よし、やるか、」
姿勢を正してパソコンに向かうと耳に温かい物が当たった。
「っ！」
驚いて振り返ると翔太がいた。
「え、なんで....」
「帰ったと思った？」
「うん、」
「お前1人残して帰るかよ」
そう言ってコンビニで買ってきた肉まんを差し出した。
「ありがと、」
「嘘なんかついて先輩ぶってさ」
「....聞いてたの？」
「聞こえたんだよ。それ、お前が持ち帰ってまで作ってた資料だろ」
「....うん、」
「何日もかかってんの知ってんのに、そんな3時間やそこらで終わるわけないだろって思ったから直帰の予定だったけど戻ってきたんだよ。アイツ帰らせる為に嘘なんかついて、本当お前変なとこ意地っ張りなのな」
彼は「気ぃ遣いすぎなんだよ」と頭をわしゃわしゃっと撫でた。
「それ食ったらスパートかけるぞ。半分こっちに回して」
「え、でも....」
「元から手伝うつもりだったんだから早く回せって。俺にくらい頼れって言っただろ」
「ありがと、」
そしてまだ温かい肉まんを口に頬張った。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6710人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
cleam(プロフ) - 蝶子さん» 蝶子さんお久しぶりです！入院されてたんですか....！大丈夫ですか？（ ; ; ）今日は生憎の雨ですが退院出来てよかったです。あまりご無理なさらないようお気をつけください！何度も読み返していただけてとっても嬉しいです（ ; ; ）いつもありがとうございます！ (2021年5月21日 13時) (
レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
蝶子(プロフ) - 今入院中でcleamさんの小説読み漁ってます！大好きな「渡辺くんってさ、」は、何十回読んでもいまだにキュンが新鮮( 〃▽〃)静かな病室で癒されております。明日退院！家でも癒されます♪何度もコメントごめんなさい。本当に癒されてるのでありがとうを伝えたくて。 (2021年5月20日 12時) (レス) id: 5dbc5644bd (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - まんまるさん» お読みいただきありがとうございます！きゅんきゅんしていただけて良かったです〜！全5作あるので、もしよければ最後まで読んでいただけたら嬉しいです◎ (2021年1月9日 12時) (レス) id: d9a9e1fa04 (このIDを非表示/違反報告)
まんまる(プロフ) - はじめまして！きゅんきゅんしながら読んでます！最高すぎます！好きです！ (2021年1月9日 9時) (レス) id: 327741c009 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - なべさん» コメントありがとうございます！ふかざわくん、意外と本気になってるのでもし良かったらふかざわくんメインの作品も読んでみていただけたら嬉しいです( ´∀｀)わたなべくんは、ツンデレを拗らせてる系なので、そこにきゅんとしてもらえたら嬉しいです◎ (2020年12月30日 0時) (レス) id: d9a9e1fa04 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：cleam
| 作成日時：2020年7月30日 22時
