渡辺くんってさ、【青】

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You side.












彼の名前を呼べば、初めて動揺の表情を見せる。
自分で呼んでって言ったくせに。


ヘラヘラとした印象だったのに、驚きと嬉しさと少しの切なさを含んだ顔。


こんな顔するんだ、なんて思ったりした。











「あー....俺ね、この黄色い妖精好きなんだよね」










そう言ってオーバーオールを着た黄色のキャラクターを指差した。










「取れるかなぁ、」


「コツ教えてあげる。まずは重さと、あの隙間にアームが入るかどうか見たいから....」










そう言って台に手を掛けながら「あの辺りね」と指示を出していく。










「うん、そうそう！上手い上手い！」


「え！持ち上がった！〜〜〜あぁ....やっぱりそんな簡単にはいかないかぁ、」


「でも今角度変わったからさっきよりも取りやすくなったよ」


「ホント？じゃあ頑張る、」












そう告げて真剣モードに入った私。











「....あの隙間に入れればいいから、この辺、んーーー！ダメだ！もう1回！」











ヤケになって何度も挑戦した。
夢中になりすぎて少し気が緩んでいた。











「Aちゃん」


「んー？」











名前を呼ばれてもクレーンを見つめたたまま微調整を繰り返す。











「あのさ、」


「ん？っ、！」











もう一度声を掛けられて振り返ると、チュッと音を立てて柔らかい感触がする。









なんもされないでね










唇が重なった瞬間、なべが言った言葉が頭の中に反響していた。





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