57 初めての通学路 ページ7
「忘れ物は？」
「ないです！」
「体調悪なったらすぐ保健室行くんやで。
今日なら俺が迎え行けるし、あとは……」
「トントンもうええやろ！遅刻する！
行くでA！」
くい、と腕を引っ張られて出発を急かされる。
あくまで優しく引かれた腕に苦笑しつつ、玄関先のトントンさんを振り返った。
「い、行ってきます！」
「行ってらっしゃい、気ぃつけるんやで！」
バタンとドアが閉まる寸前まで「Aのことちゃんと見とくんやで！」などと念押しする声が聞こえて、ゾムさんが呆れたように笑った。
普段から過保護気味ではあるが、今日に限って無理はない。
今日は、私が初めて学校に行く日なのだから。
前日から荷物の準備や確認に付き合ってくれて、私がやると言ったのに制服にアイロンをかけてくれて。
体調面が特に心配なようで、
「体調悪なったら早退させてもらうんやで。誰かしらが車出して迎え行くから」
とずっと言っていた。
ほな行こか、と歩き出したゾムさんに、遅れないようについて行く。
私が早歩きしなくてもゾムさんが歩幅を合わせてくれているみたいで、特に苦労はしなかった。
今日からゾムさんが一緒に登校してくれることになった。
まぁ中等部と高等部で校舎は別れるとはいえ、同じ学校へ行くわけだから。
シャオロンさんやコネシマさんは部活の朝練で一足先に家を出るので、残ったゾムさんが一緒なのだ。
以前グルッペンさんと見学に言った時は車だったけど、今日からは徒歩と電車通学。
昨日ゾムさんに「電車乗ったことある？」と訊かれて「ないです」と答えたらすごく驚かれた。
そもそも外出した経験があまりないから、公共の交通機関を利用したことがちっともない。
少し不安だけど、ゾムさんがついてくれるから大丈夫だと言い聞かせた。
ゾムさんに教えてもらいながら改札を抜けて、なんとか電車に乗れた。
ここに来るまでにも、人が多くて圧倒されている。
「…A、大丈夫？」
「だ、だいじょぶ、です……」
朝の電車は、人がいっぱいで満員だ。
出勤や通学の人でごった返した車両で、押しつぶされそうになる。
すると、それに気づいたゾムさんがクイ、と私を引き寄せて、車両の壁とゾムさんの隙間に入れてくれた。
ゾムさんが壁になってくれて、苦しさから開放される。
「ち、近い、けど…ガマンしてや」
「いえ…大丈夫です」
赤い顔を隠して、思わず俯いた。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
