54 見学に行こう ページ4
16時頃。
朝に言われた通り、普段より早く仕事を切り上げてグルッペンさんが帰ってきた。
それから一息つく間もなく、二人で家を出る。
グルッペンさんが運転する車の助手席に乗って、見慣れない窓の外を眺めた。
「学校に着いたらまず校長室に行って、挨拶が済んだら自由に見学してええことになってるけど、何か見たいとこあるか？」
グルッペンさんの問いかけに、少し考えて答える。
「特には……。その、シャオロンさん達も通ってる学校なんですよね」
「ああ。中等部と高等部で違うけどな。
グラウンドとか行けば見れると思うゾ」
そっか。
コネシマさんはサッカー部、シャオロンさんは野球部って言ってたっけ。
今はちょうど放課後のはずだから、部活生は部活中なのか。
ふと外の景色から視線を外して、隣に座るグルッペンさんを見る。
二人で出かけることなんてなかったから、すごく新鮮だ。
「……そんなに見つめて、何かついてるか？」
「あ、ごめんなさい……グルッペンさんが車を運転してるの、なんか新鮮で」
「まぁ、家族で車出せる奴は多いほうが便利だしな。」
大人組はみんな運転できるぞ、と聞いて思わず目を丸くした。
案外楽しく喋りながら、気づけば学校に着いていた。
来客用のスペースに駐車して車を降りると、校舎の入り口に立っていた人物は私たちにひらりと手を振った。
「あれ、ショッピさん…？」
「なんでショッピが中等部の校舎にいるんだ？」
グルッペンさんも理由を知らないようで、二人して驚いてショッピさんに近づく。
私たちが近づくと、ショッピさんはいじっていたスマホをポケットに入れて向き直った。
「今日見学に来るって聞いたんで、案内しよ思って待ってたんすよ。」
近づいてすぐに流れるような動作で私の頭をなでたショッピさんは、なんでもないようにそう言った。
「ショッピさんは、部活はしてないんですか？」
「んー？コネシマさんにサッカー部誘われとるけど、まだ入ってへんから。それより、お兄ちゃんって呼んでくれへんの？」
「う…それって、どうしてもですか？」
「今後学校で話すときとか、兄弟やのにさん付けしとったら変やろ？」
そう言ったショッピさんに、自分もコネシマさんはさん付けじゃないか、と頬を膨らませると、愛おしげに頬をつつかれた。
「…行きましょ、ショッピ兄。案内してくれるんですよね？」
「ふふ、行きましょか」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1682人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
