72 こころのうち ページ22
「ん、大丈夫や。焦らんで、ゆっくりでも、つっかえながらでもええから、話してくれん？」
トントンさんはつとめて穏やかに、私を急かさないように優しく促した。
すると私も、ギュッと固くなった心が解けて、言いたかったことが不思議と口から零れた。
「あ、の……初日に、親切なお友達ができたって、言ったじゃないですか」
おずおずと話し出した私に、トントンさんは静かに相槌をうつ。私の話を遮らずに適度に挟まれる相槌に、私もするすると言葉が引き出される。
「そのお友達と、仲が良い子がいるんですけど………その子が、私が体育を休みがちなのを、『病弱アピールみたい』って言ってるのを、たまたま聞いちゃって………」
「そっか。はじめて出来たお友達と仲が良い子やったから、他の子ぉが言うよりもショックやったな」
「はい……でも、一番ショックだったのは、その子にそう言われたことじゃなくて…………」
そこまで言って、また口ごもってしまう。
不自然に言葉が途切れた私を見上げて、トントンさんは変わらずに私がまた話し出すのを待っていてくれた。
握りこまれた手のひらから伝わってくる体温が私を安心させて、再び口を開く。
「それで、私………私の身体が弱いせいで、いつも皆さんに心配をかけていることについて考えてたら…………っ……」
止まりかけていた涙が、また頬をつたって落ちた。
でも今度は途中で言葉を切らないで話し続けた。
ようやく、私の心の内にあった言いたいことの形が見えた気がしたから。
「っ………私、家族の皆さんに心配されて、気にかけてもらえるたびに、申し訳ないなって思いつつ、ほんのちょっと、安心してるって、気がついたんです……」
「……うん」
「だから、私は嫌な子だって思って………皆さんにいつも迷惑かけてるのに、それでホッとしてる自分がいるのが、嫌だと思って………
こんな私が、皆さんに優しくされる資格はないって思って、それが一番、ショックだったんです」
なんとか話し終えた私を、トントンさんは落ち着かせるように手の甲を撫でた。
話しているうちに私のなかで思考が整理されて、ぐちゃぐちゃだった気持ちがまとまって言った気がした。
ふう、と息をついた私の様子を伺って、トントンさんは少しだけ黙って考えたあとに、口を開いた。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
