53 本当に？ ページ3
「Aさん、嬉しそうですけど、何かあったん？」
「え、か、顔に出てましたか？」
「そりゃもうバッチリ。」
答案用紙にすらすらとマルをつけていたエーミールさんが、採点する手は止めずに話しかけた。
顔に出ていたと指摘されて、少し恥ずかしくなってくる。
「実は、さっきエーミールさんの部屋に来る前………」
「明日、学校見学に行くぞ」
「学校見学…ですか？」
夕食を終えて、食器を片付けようとしたとき、グルッペンさんが話しかけた。
唐突に告げられた言葉を、私はオウム返しする。
詳しく尋ねると、明日、コネシマさん達が通っている学校の中等部に下見に行くらしい。
私の知らないところでグルッペンさんが色々と手を回してくれたようで、私を学校に通わせる準備はほぼ完了しているのだとか。
そのことにお礼を言って、それからずっとワクワクしながらエーミールさんの部屋に来たのだ。
そのことを話すと、エーミールさんは意外そうに目を丸くした。
「Aさんが、先のこと考えて楽しみにしとるのってあまり見いひんから、珍しい気がするわ……」
「そうですか？まぁ、ちょっと浮かれてるかもしれないです。」
そう言うと、エーミールさんは変わって安堵の表情を浮かべた。
「楽しみならよかったです。グルッペンさん、Aさんが学校を嫌がったらどうしようか考えてはったんですよ」
「ええ？学校、は……あんまり行けてなかったから、興味もあります。でも…」
そこで口を噤んだ私を、エーミールさんが不思議そうに見る。
「グルッペンさんはいつも忙しいから、二人で話すことってあまりないので。
明日は、見学で二人で出かけたり話したりできるのが、楽しみです。」
そう言って笑うと、エーミールさんは少し面食らったように数拍黙った。
そして、ぼそりとなにか呟く。
「なんや、グルッペンさん。不安にならんでも、充分Aさんに好かれとるやないですか」
「？、何の話ですか？」
「いえ、こちらの話です。」
よく聞き取れなくて聞き返すと、エーミールさんはそう言葉を濁して笑った。
「さっきのことは、ぜひグルッペンさんに直接言ってやってください。
あの人、自分が連れてきたのに家族の中で一番Aさんと関わりを持ててないって気にしてましたよ。」
「え、グルッペンさんが？…まさか」
エーミールさんは悪戯っぽく笑って、真相はわからなかった。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
