66 伝えたいのは素直な気持ち ページ16
「じゃあ、行きましょ」
「…はい。失礼しました。」
数分で私の荷物を持って戻ってきたショッピ兄が、私の手をとって歩き出した。
保護者の車は校門付近までしか乗り入れできないから、そこまでショッピ兄が送ってくれるらしい。
私も保健室の先生に挨拶をして、手をひかれるまま保健室を出た。
校門に向かって歩いている間も、ショッピ兄は心配そうに私のほうを伺っている。
「あの、ごめん…なさい」
「は、え？なんで謝るん」
「私のせいでショッピ兄の昼休み潰しちゃったから……」
本来いまは昼休みで、他の生徒たちは昼ご飯を食べているだろう。
でもショッピ兄は、私を教室に迎えに来てからそのまま私を探して、いまは早退する私の荷物を代わりに持って校門まで送ってくれている。
そのせいで、そろそろ昼休みも終わってしまう時間だけど、ショッピ兄はまだご飯も食べていない。
とぼとぼ歩いているうちに、校門についた。
トントンさんの車は、まだ到着していないみたいだ。
ショッピ兄は先に戻っていていいよと言っても、心配だからトントンさんが来るまで一緒に待つと言ってくれた。
申し訳なさに眉が下がると、ショッピ兄が握った手を優しく引いて視線を誘導した。
私と目が合うとショッピ兄は口を開く。
「申し訳ないとか思わんでいいんすよ。大人組はAのために色々できるけど、俺にはこんなことしかできないんやから」
そう言ったショッピ兄に、思わず口を開いた。
「っちが……そんなこと、ないです。」
珍しく反論した私に、ショッピ兄は面食らったように目を丸くした。私は続ける。
「私、ショッピ兄が探してくれなかったら、たぶん今頃まだ廊下で蹲ってただろうし……手を、握ってくれたのも、嬉しかったし、安心できたから…………っだから、『こんなこと』じゃないです」
語気を強めて私が言い切ると、驚いた顔のショッピ兄と再び目があった。
思わず勢いで反論してしまったから、それ以上の言葉が紡げない。
不自然なところで黙ってしまったショッピ兄に、何か言おうと口をはくはくさせたところで、ショッピ兄が心配したように名前を呼ぶ。
「A？」
「だか、ら……あ、ありがとう、ショッピ兄」
言葉は今度はすんなり出た。
そうだ、私はそう言いたかったんだ。
ごめんでもなく、ありがとう。
やっと言えたその言葉に肩の力が抜けた。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
