64 繋いだ両手が ページ14
情けなく呼吸を乱して咳をする。
周囲を見ないで走ってきたから、ここが校舎のどのあたりなのか、さっぱりわからない。
私以外に人が全くいないから、かなり端っこの方まで来てしまったのかもしれない。
「ゴホッゴホッ、ゲホ」
ひゅーっ、ひゅーっと危なげな音をたてて呼吸をして、廊下の隅で小さく蹲る。
苦しい。つらい。
早く教室に戻らなきゃいけないのに。
ショッピさん、待ってるかな。
それとも、私がいないから諦めて先に屋上に行ったかな。そうだといいな。
しばらくは動けそうにない。
歩けなくもないけど、こんなに咳き込んでいたらすれ違う人に心配されるかもしれないし。
「っひゅ、は…っ……ゲホｯ、ゴホｯゴホ」
息が苦しくて、はくはくと無意味に口を開閉していると、背後から足音が聞こえた。
どうしよう、こんなことで蹲ってたら迷惑だよね。
もう行かなきゃ。
「っA！」
「っげほ、え…しょぴ、にぃ……ゲホッゴホッ」
突然名前を呼ばれて驚いて振り向くと、人気のない廊下の向こうから走ってきたショッピさんが見えた。
ショッピさんは私に寄り添うように隣に膝をついて背中に手を当てる。
「大丈夫、やないな。立てます？」
咳き込む私の肩を支えて、そっと立ち上がって歩き出した。
「廊下の隅やとホコリっぽいし、それも咳に悪いから。保健室まで行きましょ」
私の手を引いて、時々私の様子を見ながら進むショッピさんについて行く。
歩きながら、私のクラスまで行ったけど、机に弁当を出したままいなくなっている私が気になって探していたと説明された。
わざわざ探してもらっていたのが申し訳ないけど、今そんなことを言う余裕もない。
保健室に着くと、驚いた様子の保健医が私を中に入れてくれた。
「フューラーさん？君は、高等部の生徒よね。とりあえず奥に来て」
高等部の生徒が私を連れてきたのに目を丸くしていたけど、咳き込む私を奥の空いていたベッドに座らせた。
いつも使用する薬はあるか等質問して奥へ引っ込もうとした先生に、ショッピ兄が声をかけた。
「あの、俺は何したら…」
「きみはフューラーさんのそばにいてあげて。」
何かを探しに引っ込んだ先生に言われて、ショッピさんはベッドに座る私の前に膝をついた。
ショッピさんは黙って私の両手を握る。
そこに言葉はなかったけど、大丈夫だと伝わってくる気がして、咳は止まらずとも心が落ち着いた。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
