63 緊急離脱 ページ13
教室に戻る傍ら、閑散としていた廊下で数人の話し声が聞こえる教室があるのに気づいた。
ここは移動教室でしか使わないから、昼休みはほとんど人なんかいないのに。
耳に入った声に聞き覚えがある気がして、思わず足音を潜めて教室へ近づいた。
近づくと、さっきよりもハッキリ声が聞こえる。
ドアに手を掛けたところで、中から聞こえた声に手を止めた。
「最近の体育キツすぎ。持久走早く終わんないかなー」
「あはは、うちら部活でも毎日走ってるからね」
「悠飛は全然キツそうにしてないじゃん！」
聞こえたのは、悠飛ちゃんと、悠飛ちゃんの友だちの奥原カエデさんの声。
前に、教室に悠飛ちゃんを呼びに来ていた、カエちゃんって呼ばれてた人だ。
うんざりしたように話す奥原さんに、苦笑いしたような悠飛ちゃんの声がする。
「てかさ、悠飛の友だちの…Aさん？って、なんで走んないの？体育いっつも見学だよね。」
いいなぁ！と声を上げた奥原さんの声にドキリと胸が騒ついた。
自分の名前が出るなんて、思わなかったから。
「Aは体が弱くて、運動は医者に止められてるんだって。仕方ないよ。」
「えー？どうだか。本当に体が弱いなら、もっと設備が充実した学校行くでしょ。」
悠飛ちゃんが説明してくれたけど、奥原さんは納得していないように反論する。
「なんかAさんって、見るからに弱いです！って感じで、アピールみたいでウザくない？」
ガタッ
屋上さんの言葉に驚いて、思わずドアに掛けていた手が震えて音を立ててしまった。
私が音を立ててから二人の会話が止まった。
聞いていたことが気づかれる。
そう悟った瞬間、教室とは逆方向に走り出した。
廊下にいる生徒たちが驚いたように私を見ても、知らないフリして駆け抜けた。
どうしよう、聞かなきゃよかった。
なんで。なんで。
今までにないくらい、走って走って、やがて人気がない廊下で壁にもたれかかるようにうずくまった。
膝を抱えて、その腕に顔を埋めて荒い息を吐く。
ひゅうひゅうと気道が音を立てた。
「っひゅ、ゲホｯゴホｯゴホｯ」
ああ、勢いに任せて走ったりするんじゃなかった。
今更ながら後悔の念が湧いて、考えなしな自分に腹が立った。
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遥(プロフ) - 前作から読んできました。また更新シテクレテありがとうございます！無理をせずに頑張ってください！ (2021年12月8日 13時) (
レス) @page24 id: ed604a5787 (このIDを非表示/違反報告)
ロクロ - なめらかさん» とんとんさんのことばがすごくあったかかった。優しい、主さん (2021年12月8日 9時) (レス) @page24 id: 315f44b475 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - なめらかさん» コメントありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです。励みになります。今後も更新を頑張ってまいりますので、応援よろしくお願いいたします！ (2021年12月8日 5時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
なめらか - 素敵なお話で一気読みしてしまいました！心が暖かくなります(* ´ ` *)陰ながら応援しております…！ (2021年12月8日 1時) (レス) id: 8591759a73 (このIDを非表示/違反報告)
ななし(プロフ) - @死神れもんさん» コメントありがとうございます、お久しぶりです。長らくお待たせしてしまいましたが、まだ読んでくれる方がいることがとても嬉しいです。相変わらず更新は遅いですが、これからもお付き合いいただけますと幸いです。 (2021年4月3日 9時) (レス) id: c457153612 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ななし | 作成日時：2020年5月15日 10時
