俺と妹の22年 (ページ4)

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いよいよ退院 6月30日 0歳ページ4

ベビー用品を揃え、オムツ替えと入浴を練習し、いよいよ待ちに待ったAの退院の日がきた。

結局、退院までに3ヶ月近くかかったが、そのお陰で祐也くんと同じ保育園に入る手続きも終わらせることができた。

今日はこのままAを連れて帰れると思うと、病院に行く足取りも軽くなる。

「お兄さん、お話があるのでこちらにどうぞ。」

小児科病棟につくと、Aの主治医である小山先生が待つ小部屋に通された。

「退院、おめでとうございます。」

小山先生が、嬉しそうに言ってくれた。

「ありがとうございます。」

そして、話が始まった。

「今後の生活のことですが、Aちゃんは免疫機能に異常があるため、他の子供に比べ風邪を引きやすい、風邪をひいたときに、肺炎や中耳炎などの合併症になりやすい、といったことがあります。
ですので、少し熱があるなどの症状があったら、すぐに受診するようにしてください。」

「わかりました。」

「そういえば、前に話をしていた保育園、入るところは決まりましたか？」

「はい。友達の息子が行っている病児保育園に入ることができました。」

「そうですか。良かったです。
もしかして、ここの隣の保育園ですか？」

「はい。」

「あそこなら、この病院と連携しているので俺も安心です。
なにか、退院後のことで心配なことはありますか？」

「何が心配なのかも、分からないんです。
俺、実は小さい頃は施設で育って。
今の両親は、施設にいた俺を引き取って養子縁組してくれたんです。
だから、普通の家庭の子がどうするのか全然わからないっていうか。」

思いきってぶちまけたところで、ふと小山先生をみると、鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしていた。

そりゃ、そうだよな。いきなりこんな話をされたら、反応にこま…

「シゲ！やっぱりシゲだ！
俺！小山！施設で一緒だった三個上の！」

小山…？確かに、言われてみれば面影があるような…

「名字変わったし、大人になってるし、全然気づかなかった！」

いや、確かにこの感じは小山だ。

あの天然の泣き虫が、まさか医者になってるなんて。

「小山か。久しぶり。」

「久びさなのに、テンション低くない？
あ、LINE交換しておこう。これ、医者と患者としてじゃなくて、友達としてね。
なんか困ったことあったら、何でも連絡して！」

バリバリ医者と患者としての連絡じゃねーか、とつっこみそうになったけど、ありがたいことはありがたいから、黙って甘えておこう。