俺と妹の22年 (ページ17)

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「シゲ、Aちゃんににぃって呼ばせてるんだ。」

並んでブランコを押しながら、まっすーが言う。

「別に、呼ばせた訳じゃないんだって。
最初、シゲ呼びから入ったの。
それを変えたくて小山に相談したら、一人称をお兄ちゃんにしてみたら？っで言われたから、そうしたんだけど、そしたらこうなった。」

「なるほど、中を抜いた感じか。」

「お兄ちゃんって呼ばれたい願望があるの！
お兄ちゃんじゃなくても、せめて兄ちゃんとか、おにぃとかじゃない？」

「え？おにぃってありか？
まあでも、「お」がついてるだけ、にぃよりマシか。」

まっすーは笑っているけど、割りと切実な悩みだ。

「まっすーはどうやってお父さんって呼ばせたの？」

「いや、自然に。気づいたら。
な、祐也。」

すると、祐也くんは振り返って、ニコニコして言った。

「うん！祐也のお父さん！！」

その笑顔は、まっすーが溺愛するのも分かるほど可愛い。

まあ、Aも全然負けてないけどな。

「にぃ！もっと！もっと！」

「え～？もっと？危ないよ？
痛い痛いになっちゃうよ？」

「もっともっと！」

まあ、あと少しだけなら危なくはないか。

そう思い、少しだけ押す力を強くした。

「しっかりお手てギュッてしてるんだよ。」

「うん！」

その後、かなりの時間、Aと祐也くんはブランコから離れようとしなかった。

Aはかなりハマったらしく、帰るよと言っても嫌がるほどだった。

嫌がるAを見兼ねて、まっすーがこのあと家で一緒に遊ぶことを提案してくれたおかげで、なんとか機嫌は持ったけど。

もちろん、まっすーの家に行くのではなく、まっすーたちが家に来る。

「はい、お茶どうぞ。」

「ありがと！！」

「あいがと！！」

子供用のコップに麦茶を淹れて渡すと、二人は元気よくお礼をいった。

「どういたしまして。」

子供たちが二人の世界に入ると、俺らも駄弁りだす。

「シゲ、ブランコにハマっている子供を持つ身として、1つ忠告してあげる。」

「なに？」

「筋肉痛、舐めんなよ？」

「は？」

「ブランコ押すのって、結構筋肉使ってるんだよな。
普段、高校生を相手に体育をやってる俺ですら、初めの方は若干筋肉痛になってたから、運動不足の国語教師じゃ、しんどいぞ。」

そのときは大袈裟だと思っていたまっすーの言葉だったが、俺は翌日、決して大袈裟なんかじゃなかったと思い知らされていた。