俺と妹の22年 (ページ15)

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「加藤Aちゃんのご家族の方、診察室２番にお入りください。」

アナウンスがかかり診察室に戻ると、看護師さんの腕に抱かれてあやされていたAは、すぐに俺に手を伸ばしてきた。

「お兄ちゃんの方がいいね～。
Aちゃん、頑張りましたよ。」

看護師さんからバトンタッチすると、Aは俺の服をぎゅっと握り、胸に顔を押し付けた。

泣いているAには悪いが、とても可愛い。

「これで予防接種は終わりなんですけど、普段の生活のことや、発達のことなどで、なにかお困りのこととかありますか？」

そういや最近、小山は忙しいらしくプライベートではまったく顔を合わせていなかった。

今度会うことがあったら訊こうと思ってたことを訊いておこうか。

「A、だいぶ言葉を話すようになったんですけど、俺のことをシゲって呼ぶんですよ。」

「ぷっ……」

「笑ってんじゃねーよ。」

「ごめんごめん。」

小山は呼吸を落ち着けると、医者モードになり真面目な顔になった。

「小さい子って、周りの人が話す言葉を聞いて、言葉を覚えていくんです。
つまり、成亮さんのことを誰もお兄さんと呼んでいなかったら、Aちゃんも成亮さんのことをお兄ちゃんと呼ぶってことが分からないんですよ。
成亮さんのことを、兄だと認識できるくらいの年齢になれば、呼んでくれると思いますけど。」

なんだよ、まっすーと小山のせいかよ。

こっちはお兄ちゃんって呼ばれるのを楽しみにしてんだぞ。

「それまで待つしかないですか？」

「そうですね、あとできることとしては、一人称をお兄ちゃんに変えてみたり、周りの人に成亮さんのことをお兄ちゃんって呼んでもらうことくらいです。」

なるほど。

若干の恥ずかしさはあるけど、やってみる価値はありそうだ。

「ありがとうございます。」

「ではまた検診で。
Aちゃん、またね。」

デレデレの小山のことを見事に無視し、俺の胸から顔を離さないAの様子に、少しさっき笑われたことへの仕返しができた気がして、気持ちがスッキリした。

これからは、お兄ちゃんと呼ばせるように頑張ってみよう。