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「どこで何してたんだよバカ！急にいなくなって！
何かあったんじゃないかってどれだけ心配したか分かるか？！相談したいことがあっても、全然電話も繋がらないし！」
大我の腕に込められた力は、想いを象徴するかのように強い。その背中に、俺も腕を回すことができたらどれだけいいだろう。
「一方的に別れてごめん。
でも、これがお互いのためだと思った。元気でな。樹のことよろしく。それからAのことも。」
大我を引きはがし、振り返らずに病室を出る。振り返れば最後、離れられなくなる。
大我のふざけるなという声が俺の背中にぶつけられる。いいんだ、これで。お前が付き合っていたヤツはこんな最低なヤツなんだと、嫌いになってくれ。
自分を鼓舞するかのようにズンズンと歩みを進めたが、エレベーターのボタンを押したところで何かが決壊した。
何のしがらみもなく、一緒にいられたら良かったのに。遠くから幸せを祈るのではなく、近くで一緒に幸せを探したかった。
場所もわきまえずにうずくまる俺の背中に、温かなものが触れた。
驚いて振り返ると、その温かなものの主は慎太郎さんだった。
「見苦しいものをみせてしまいすみません。」
「いえ、こちらこそお節介なマネしてすみません。
頬、だいぶ腫れてるみたいですけど大丈夫ですか？」
慎太郎さんは、座って座って、とデイルームの椅子を俺に進めたあと、自販機で3本飲み物を購入した。
「コーヒー、ミルクティー、ココア、どれがいいですか？」
生徒の関係者から物をもらうのは、という気持ちもあるが、差し出された優しさを無碍にできず、俺はお礼を言ってココアを手に取った。
「俺はコーヒー。これ、頬にあててください。
腫れてますよ？」
慎太郎さんが今度はミルクティーの缶を差し出した。言われてみれば確かに痛い。大我の痛みに比べたら、赤子に叩かれた程度のものだろうけど。
「大我、俺の幼なじみのお兄ちゃんなんですよ。
弟、北斗って言うんですけどね。小さい頃、北斗の家に遊びに行くと、いつも一緒に遊んでくれたんです。大きくなって北斗と大我が仲違いしちゃってからは、大我と俺の2人で遊んでたくらいの関係なんです。」
確かに、彼から弟のことを聞いたことがあった。5つ年下の弟がいることも、大人になってから関係が上手くいかなくなったことも。ただ、詳しく話してくれることはなく、お前がいれば十分なんて言葉ではぐらかされたけど。
「失礼ですが、高地先生は大我の恋人であってますか？」
「元、ですけどね。2年前、一方的に別れました。」
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作者名：じゃむ | 作成日時：2024年1月9日 21時
