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まだ時間外ということで救急に通された私は、すぐさまベッドに寝かされ、ぼーっとする頭でぼんやりと天井を眺めていた。北斗先生もまだ外来が始まる前だからか、すぐに救急まできてくれた。




「脱水しているようなので、とりあえず点滴をします。」




北斗先生の声がしたあと、左腕がチクリと痛んだ。




「問診票には昨夜から下しているとありますが、それ以前は問題ありませんでしたか?」



正直、腹痛も血便も時々あった。しかし、そのくらいで「受診したいから休みます」なんてことはできないし、受診して入院になったなんて想像すると、怖くてどうしても病院から足が遠のいた。「使えない人」の烙印は、ささいなことで簡単に押されてしまうことを、痛いほど学んでいる。だから、この前の内視鏡検査の予定日にシフトの交換をお願いされたときも、素直に承諾して検査をキャンセルした。まあ、検査が嫌だったというのも0ではないけれど。



「慎太郎からは、あまり体調が良くなさそうな日もあったと聞いていますが。」



驚いた。何も言われなかったから、うまく隠せていると思っていた。思い返せば、ここのところ事務仕事は少なめで定時に上がれていたし、私が出勤しているときの食事は、あまりガッツリとしていないものが多かった。そんな気遣いにも気づけず、お礼も言えない自分が、また嫌になる。



「時々お腹が痛かったり下したり、血が混じるときはありましたが、仕事を休まなきゃいけないほどではありませんでした。」



「あなたの場合、「仕事を休まなきゃいけないほど」の状態となるとかなり悪いように感じますが、分かりました。
前回検査もできていませんし、状態もかなり悪いようなので、少し入院しましょう。」



「あの、入院は避けたいんですけど。仕事もありますし。」



「主治医として、いまのあなたに出勤を許可することはできません。」



またこのセリフ。一年前と同じだ。泣きたくないのに、涙があふれ出す私も。

どうにか涙を隠せないかと、寝返りをうち、先生に背を向けた。



「すみません。」



別に、先生が謝らなきゃいけない理由なんてどこにもない。それでも心底申し訳なさそうに謝罪する声が、高校生の頃の主治医と重なった。もしこの状況で主治医が大我先生だったら、なかなか終わらないお説教をされそうだ。大人になっても成長しないなんて言われるのだろうか。会わせる顔がないから、もう会えないけれど。

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作者名:じゃむ | 作成日時:2024年1月9日 21時

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