君のとなりで (ページ3)

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俺たちが近くにいることに気づいた前田は、「とにかく、ちゃんとしてよ！」と言い残しその場を去っていった。

「ごめん、いまの話、聞こえてたよね？」

気を遣うAさんに対し、こちらも気を遣うべきか考えてしまう。が、この男は違った。

「なーんも聞こえてない。聞こえてたとしても、頭パシッとしたから忘れたっしょ。
ってことで、アイス買ってきまーす。」

一見空気を読まない発言にみえるが、慎太郎はトップレベルの気遣いができるヤツだ。こういうところに、少し憧れているというか、カッコイイ大人だと思っている。本人には絶対に言ってやらないが。

なぜか自然な空気を醸し出し付いてきた慎太郎も含め、3人でダラダラと1キロ先のコンビニを目指す。

「ああいうの、止めたりしねーの？」

「まだまだお子ちゃまの樹くんには分かんないか。
あぁいうのは、変に俺が入ると余計に拗れるんだよ。
もちろん、後でフォローはするつもりだけど。あんな助言いちいち素直に受け入れちゃったら、Aちゃんの良さがなくなっちゃいそうだし。」

わーわー上から押さえてくるAちゃんとか嫌だろ？なんていうから想像してみたら、なんだか少し笑えた。

「樹はさ、いっそ誰かが進路を決めてくれたらとか思ってんの？」

急に核心をつくような一言に、空気が切り替わったのを肌で感じた。こんなにも見透かされていたなんて。

「何年一緒にいると思ってんだ。なめんなよ？
まぁ、自分で選ぶってことは、自分で責任負うってことだからな。誰かにそれを丸投げしたくなるのも分かるよ。
実際俺も丸投げした側の人間だし。」

黙って俺らの話を聞いていた風磨も、意外な一言に慎太郎の顔を見つめた。

「やりたいことも特になかったし、周りの大人からは父親の施設を継ぐんだねっていわれて育ったし。
施設を継ぐことを押しつけられたって意識でいれば、何か失敗しても俺に押しつけた側の人の責任にできると思った。
むちゃくちゃ甘い考えだったって、後から思い知ったけどな。」

滅多にみせない憂いを帯びた表情に、俺も風磨もそれ以上深くは聞けなかった。
「悩んで決めるしかない」というAさんの言葉が頭をよぎった。