誰？ ページ4
「…誠に申し訳ないのですが。
あたし、あなたのこと、
ホントに覚えてなくて…
お名前、伺っていいですか？」
おい、マジか…
はっきり言われたよ。
オレのこと、知らないって。
『…朝倉さん、オレのこと、覚えてないの？』
「えぇ、あの…
大変失礼なことは重々承知しております。
ただ、申し訳ございません。
どうしても…お名前が…」
…いや、名前がどうとかそういうことじゃない。
Aからオレの存在自体が
抜け落ちてるんだ。
初めまして、って顔してるもん。
ましてや、今なんて、
オレのことくらい当然知ってるだろ？
って思ってる男みたいに見えてるんだ。
そんなんじゃないのに…
どうすれば警戒されないで済むかな…
『隣に越してきました。
松本です…』
とりあえず、先週しに行った
引っ越しの挨拶をしてみた。
「あーーーーーっ！！？！」
『…思い出してくれた？』
「マンションの…？」
良かった…
こないだのことは覚えててくれるんだ。
『そうだよ〜
挨拶行ったの、先週末とかだよ？
もう忘れられたんだ。』
「忘れるも何も！！
まさか、プライベートな空間の方で
お会いしてたなんて…
思いもしなかったですよ。
同じ会社の方かと思って
頭をフル回転させました…」
えぇ…
残念ながら、会社も一緒ですけど。
それもこないだ挨拶したし。
どんだけ興味ないの…
さすがにオレもメンタルそこまで強くないよ？
『……ちなみに、同じ会社の方、
でもありますけど。
それに関しても、今週頭にご挨拶してます』
すんげぇ驚いた顔してるな。
物忘れ、激し過ぎじゃない？
とか思ってるのかな…
てか、オレのことだけ、忘れちゃうのかな。
だったら…
どうしよう…
でも、そんなことでめげてちゃダメだ。
『松本潤と言います。
よろしくお願いしますね、朝倉さん。』
出来るだけ、印象に残るように
ゆっくりと話して、
目を見つめて、
微笑んだ。
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作者名：2530 | 作成日時：2016年9月25日 14時
