香り ページ30
Aが
お風呂場の方に
消えて行くの背中をボーッと見てた。
本当に覚えてないんだなぁ…
こうやって思うの、何回目だろう。
いい加減分かれよ。
自分で呆れる…
良かれと思ってしたことが裏目に出る。
思い出して欲しくてしたことで自分が傷付いてる。
…ココもさ、一緒に来たじゃん…
初めて来たみたいに言ってるけど、
一緒に来て、お風呂入って、ゴハン食べて…
「くわーーーー…」
なんちゅう声を出してるんだ、アイツは…笑
前に来て入った時も…
…「前に」「前に」って、そればっかり思ってる。
まぁ…例え結婚してても、10年経てば
忘れることもたくさんあるだろうし。
ずっとそばにいたニノが思い出せないんだって
言うんだから、もうどうしようもないのかもな。
けど、Aは何かを思い出したくて
ココまで来たんだから。
少しでも手助けしてあげたいとは思う。
窓の外を眺めながらお茶を飲んでると
「失礼致します」
と、夕食を運んで来てくれた。
もうそんな時間か…
料理が冷める前には上がってくるといいけど。
「ごゆっくり…」
『ありがとうございます。』
おー、美味そう！！
お腹空いてきた〜
早く出て来ないかな〜
「あれ？遅かったですか？」
あ、良かった、出て来て…
『今持ってきてくれたとこ〜』
って振り向くと…
そこにはホカホカして頬が赤くなった、
浴衣を着て髪をざっくりまとめただけの
Aがいて…
あぁ…風呂上がりって心臓に悪い。。
そんなオレを怪訝そうに見て
「なんですか…」
って聞いてくる。
いや…何って言われても…困ったな…
「スッピンだからですか？」
『あぁ、スッピンなんだ…
カワイイと思って』
はっ！！やべぇ、また警戒させるような本音が！！
なのにAは「疲れたんですね」とか
見当違いなことを…
オレの前をそのまま通り過ぎようとした。
あぁ…Aの香りがする…
って…
思ったら、
勝手に…抱き締めてた…
あんなに待ち焦がれたAの香りがここにある…
『…ゴメン、少し、このまま…いい？』
…ダメだろ。
こんなことしたくてココに来たんじゃないのに、
やっぱり好きで…大好きで…
目の前にしたら、身体が勝手に動いてた。
殴られるかな…
抵抗を見せないのをいいことに
首筋に顔を埋めようとして…
…やめた。
そろそろ離れないと、オレ、やべぇ奴になってる。
離そうとすると…
Aの手がオレの背中に
まわった…
・
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作者名：2530 | 作成日時：2016年9月25日 14時
