夜の果て(all J side) (ページ1)

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夏ページ1

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今年もまた夏が来た。

Aが、オレを忘れてから10回目の夏。

毎年思う。

『今年、思い出してもらえなかったら
　
　もう諦めよう…』

それを9回繰り返した。

また、それを繰り返すのかな。

オレはいつまでAのことを

遠くから見ていればいいのかな。

今年こそ…

毎年思ってることを、また考える。

そこに調度良く、

「松本くん、こんな時期に悪いんだが、

　品川支社に異動だ。

　体調崩して休み休みやってたヤツが

　ついにダウンしちゃってね。

　すぐにでも行ってもらいたい。

　こちらの引き継ぎもあるから、

　向こうには2週間、時間をもらってる。」

…品川……

Aのいる支社だ…

急に、全身が心臓になったみたいに熱くなった。

ついに運が回ってきたのかもしれない。

渋谷から品川なんて、

引っ越す必要ないんだけど、

もしかして…

Aがまだあのマンションに住んでたら…

そう思って、不動産屋を巡った。

あれ？

ストーカーみたい…？

だって、

もしかしたら、

思い出してくれるかもしれない。

オレのこと、

憶えててくれるかもしれない。

そんな望みを抱いて

また、今年の夏を過ごす…

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