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Mside
「何、何か言いたい事があるなら、素直に教えてほしい。俺は鈍いってよく言われるから…うーん、俺的にはそう思わないんだけど…とにかく、悩み事があるなら、出来れば…打ち明けて、共有して一緒に解決する事が出来たらいいなって思ってる。」
翔さんは優しい。
冷静でよく周りを見ている。
それは周りを見る点であって、自分の事は疎い。
「俺の小さな嫉妬っていうか、モヤモヤっていうか、とにかく、あの新人スタッフが翔さんの事、す、好きって翔さんの居ない所で言ってるから…その、何か嫌だなって…。」
「…そっか。」
えっ！？
意外とあっさりな感じ！？
俺は凄く気にしているんだけど…。
翔さんってモテるし、その気になれば、どんな女性だって振り向いてくれそうだから。
俺が翔さんの相手で良いのかなって…。
「…安心して。」
「え？」
「…俺には潤だけだから。色んな家事をやらせちゃって…大袈裟かもしれないけど…もう、俺…潤無しでは生きられなくなっちゃったから。」
澄んだ真っ直ぐな目で射抜かれて俺はこれ以上、悩まなくて良いと思った。
俺を安心させようと頑張っている翔さんがとても愛おしくて嬉しくて…。
「ありがとう…ございます。」
「そんな感謝なんて…寧ろ、俺が潤を悩ませている原因だからさ、謝らないといけないんだよな。」
「そ、そんな詫びなんて要らないから。」
慌てて否定する。
翔さんは俺に対して過保護っていうか、必死なんだよなー。そうやって優遇されると特別な感じがして嬉しいから文句なんて言わないけど。
「そうなの？潤って変な所で遠慮するよね。俺、そのスイッチが分からないっていうか、謎の線引きが凄いんだよなー。ふふっ、そういう所も好きだけどね。」
「なっ！？」
恥ずかしいんだけど！
俺にそんな事、言わないでよ！
「…ありのままの潤が好き。俺は他の女性に惹かれる事は無いから。」
そう言うと翔さんは蜜柑の皮を剥く。
炬燵で食べるこの季節。
必然的に距離が近くなって少しドキドキ。
「蜜柑…美味いなぁ。」
「これから鍋、作るから待ってて。寝ちゃダメだからね。」
「んー頑張る。」
その生返事、絶対、寝るじゃねーか。
早めに作らないといけないな。
「潤、口開けて。」
「え？」
「はい、あーん。」
「…あ、あーん。」
剥いた蜜柑を俺の口に入れる翔さん。
この蜜柑の甘酸っぱさを俺は忘れないだろう。
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
