13. はらはら ページ36
Mside
翔さんと仲直りして快適に恋人に変わる前と同様の生活を楽しんでいた。
俺が働くお店に毎日、足を運んでくれる健気な翔さんを内心、笑みを溢したくなるぐらいニヤニヤしているんだけど、それは本人には言わない。
ただ、常連の彼をこのまま、常連にしておくのは何か引っかかるというか、複雑な気持ちになるようになった。
新しく入って来たオーダー担当のアルバイトの仲良しな女性が目を付けているらしい。
彼が去った後にこそこそと話をしている。俺はそれを盗み聞きしている。
「あの常連のイケメンサラリーマン、彼女とか、居るのかな？」
「私がオーダーを取った時は指輪とか、そういう物は付けてなかったわよ。」
「本当？」
「ええ！あの人、チャンスなんじゃない？」
「えーでも、私なんかで釣り合う訳ないし、指輪とかが無いからって彼女が居ないとは限らないだろうし…タイプだし、告白はしたいけどなぁ。」
こ、告白したいだとっ！？
ヤバいヤバい！
翔さんが狙われている。
あの人、そういう所、意外と鈍感だし、恋人にはなったけど、自覚しているかは分からないし…。
俺から指輪とか、あげたらいいのか？
「松本さんもカッコいいけど、やっぱり、爽やかなあのサラリーマンさんの方が好きなのよねー。」
俺の事をわざわざ言わなくてもいいんですけど。知らない所で格付けされても俺の気持ちはどうすればいいのか分からないし…。
モヤモヤしながら俺は今日の仕事を終えた。
「ただいま…。」
「潤、お帰りー。疲れてんなー。」
「…まあね。色々と忙しいからさ。」
「お疲れ様です。そういえばさぁー最近、潤のお店に見た事ない店員さんが増えたねー。清潔感ある女性が入って店の雰囲気も更に良くなったと思うなー。」
「…そ、そうだね。」
否定は出来ない。
翔さんも気付いてはいるんだな。
女性の店員さんが増えた事。
ただ、それが厄介で…。
「潤、どうかした？」
「い、いや、大丈夫。」
「体調が悪いなら早く寝た方がいいよ。無理して俺に料理なんか作らなくていいから。コンビニ食でも生きていけるし…。」
「それは嫌だ。俺は翔さんに作りたいから作ってんの。翔さんの胃袋を掴みたいから。」
「その…もう掴まれてるけど…。」
「そ、そうかもしれないけど！翔さん、もっと自覚してよ。」
「自覚？」
「い、いや…何でもない。」
喧嘩はしたくない。
ただ、翔さんは何もしなくてもモテるって事をもっと知ってほしい。
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
