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Mside
「翔さん、真に受けんな。俺は彼女なんて居ないですから。」
「枯れてるわねー二人共。」
「余計なお世話だしー。」
翔さんは訝し気な表情のままだった。
でも、俺らも良い年だよな。
恋愛とか、そういうの、真面目に考えないといけない年だよな。
モヤモヤしながら、料理を作った。
翔さんと大家さんは「美味しい」を連呼しながら平らげた。
「ご馳走さまでした。潤ちゃん、ありがとう。」
「いえいえ、いつもお世話になっているのでこれくらい、どうって事ないですから。」
そう言うと大家さんは微笑んで去って行った。チラッと翔さんを見るとお皿を片付けていた。
「あのさ、翔さんは合コンとか、行かないの？」
「行かなーい。俺、そういうノリ、嫌だから。」
「…そっか。」
「もしかして、潤、行きたいの？」
「ち、違うけど、お、俺なんか、翔さんと違って出会いとか、無いし…。」
「そんなに誰かと付き合いたいの？」
「…っ！」
何でそんなに急に核心を突くような…。時々、感じる翔さんの氷の眼差し。
その眼差しを向けられたら俺は発言するのに臆して良い返しが思いつかなくなる。
「そ、そういうあんたはどうなんだよ。まさか、このまま、独身とかほざくんじゃないだろうな。」
「そんなの、分からないよ。だって、今、女性の中で俺がずっと一緒に居たいと思える人が居ないんだから。」
「あんたには沢山、出会いがある。探そうと思えば、あんたが気に入りそうな女性だって居る筈だ。なのに、何で自ら探そうとしない。恋愛に積極的にならないんだよ。」
あんたは、目の前の現実から目を逸らしているだけなんだよ。
このまま、独り身を貫くなんて出来る訳ないだろ？
「…折角、今日もいつも通りの生活が送れると思っていたのに…このままの生活が楽しい、それだけで十分だったのに…っ！潤は何がしたいんだよっ！」
そう言って翔さんは部屋を去って行った。
「…んだよ、それ。意味、分かんねぇよ。」
結局、何も答えられてないじゃないか。
言いたい事だけ言って終わりかよ。
あんたらしくない。
『潤は何がしたいんだよっ！』
冷静な判断が出来るようになって、振り返ってみれば、滅多に声を荒げない翔さんが俺に放った一言が酷く胸に突き刺さった。
ひび割れた硝子の破片のような…触れるだけで怪我してしまいそうなそんな感じだった。
「…俺は…俺は何がしたいのだろう？」
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
