10. るんるん ページ27
Mside
試食から三日後。
俺が帰宅すると菖蒲荘の大家さんと翔さんがポスト付近の花壇で園芸をやっていた。
「翔さん、メモを片手に何やってんの。」
「潤、お帰りー。今、大家さんに取材してんのー。次号から家庭菜園とか、園芸の特集を組むから情報集めー。現場の声的なー？」
休みの日にも仕事に繋がる行動を取るなんて翔さんらしい。それに勉強熱心だな。
「翔ちゃん、園芸、向いてないけどね。」
「んぁぁ、それを潤に言ったら示しがつかないじゃん。せめて園芸くらい見栄を張らせてよぉー。確かに水を入れ過ぎたり、手際は悪いけど…。」
ダメダメじゃないか。
俺に見栄を張って少しは出来る男アピールしようとしてたなんて、何て悪どい。
「拗ねんなよ。てか、いつの間に、こんなにトマト、大きくなってたのかよー。」
「そうなのー。熟してねー食べ頃なのー。お手伝いのお礼で翔ちゃんにプレゼントよ。」
「ありがたいんですけどー、俺、トマト貰っても何にも出来ないから潤にあげるー。」
大人としてあるまじき発言。
トマトの皮くらい剥いてほしいんだけど。
「じゃあ、このトマトと麺つゆと…大量に余ってる素麺で食べる？」
「食べる食べるー！」
「大家さんもどうですか？」
「いいねー。潤ちゃんの料理は翔ちゃんから美味しいって聞くから是非是非！」
翔さん、大家さんに話してるんだ。
しかも、その内容が物凄く恥ずかしい。
「大家さん、その話もタブーでしょ。照れちゃうからー。潤、顔がニヤけてるからー。」
「ニ、ニヤけてなんかないし！」
「顔は正直だもんねー潤ちゃん ♪ 」
まさか、あんた、俺が三日前にやったくすぐりの刑で散々、笑わせた事、まだ根に持ってんのか？
「潤ちゃん呼びやめろ。」
「えー！何で何でー！可愛いよねー？大家さん。」
「可愛いなんて当たり前よー。だって、潤ちゃんは潤ちゃんなんだからねー。」
大家さんを味方につけやがって！
俺を弄る材料を見つけて嬉しそうにしてやがる。
「大家さん、翔さんの話は全て無視して下さい。」
「んぁぁ、こめかみ、ぐりぐりしないでー。」
「あんたが悪いんだぞ。悪ふざけして。」
「だって、腹筋が筋肉痛なんだもーん。死ぬ程、笑ったし、これでも滅茶滅茶、痛いんだからねー。」
その主張は翌日、散々、聞いたよ。
痛いアピールをし続けてくる。
それはもうしつこいくらいに。
「とりあえず、ご飯。」
「はいはい、作りますよ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 406人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
