6. きらきら ページ15
Mside
それはある日の朝。
俺は偶々、休みで翔さんは仕事。
朝食を済ませ、洗濯も掃除も終え、ひと段落し、リビングで録画した映画を見ようとリモコンを取ろうとした時、テーブルの上の財布に気が付いてしまった。
そして、それは俺のではなく、翔さんの。
あの人…朝だからぼーっとしていたのか…。それにしても今回のは酷い事案だ。
財布を忘れて出掛けるのは国民的アニメの魚の名前の人ぐらいだと思っていたのに、まさか、こんな近くに居たとは…。
俺は出掛けられる格好をして翔さんの務める会社に向かった。
行くのは初めてかも…。
一応、スマホにメッセージ送っておくか…忘れている事と届けに行く事を伝えると受付の所に座る場所あるから、そこで待機しろという返事と栗鼠のイラストのスタンプ「ありがとう」が返ってきた。
ドキドキしながら、大きなビルのある町の中を進み、これまた立派なビルの受付ロビーの高そうなソファーに腰掛けた。
お昼前だし、声が賑やかかも。
みんな、立派なスーツをこしらえている。
俺、絶対、場違いな格好だ…。
恥ずかしくて早く帰りたい。
翔さん、俺に公開処刑させる気か？
「しょ…さん。」
くそ！あの人、女性に囲まれてやがるっ！
キラキラ王子様モード全開かよ！
まぁ、確かに顔立ち良くて、しかも、スーツ姿なんてモテるかもしれないけど、まさか、ここまでとはっ！
「櫻井さぁーん、お昼ご一緒しませんかー？」
「櫻井さまぁ、ランチ、ご一緒しても宜しいでしょうか？」
「ちょっ、櫻井先輩は私と行くの！」
「はぁっ！？私よ！」
女性同士の醜い争いが始まってるぞ！
渦中の翔さんは…あれ？
居ない？
「潤、キョロキョロして挙動不審だよ？ただでさえ、格好が浮いてるのにキョロキョロしたら、本当に危ない人だよ？」
いつの間にか、目の前に居たんですけどー！！
「俺をそうさせてんのは何処の誰なのか、分かってるか？」
「あーごめんごめん。ううー、職場でも潤に怒られるのは勘弁だよー。もうやらないから許してー。」
「翔さんのもうやらないは信用できません。」
「そんなぁー。じゃあ、お昼奢るからー。お願い、許してー。」
「そんな腕を握ってまで言わなくていいから。ここ、職場なんだから仕事モードの時くらい、ビシッとしてくれよ。」
「ただ、本音を言わせてもらうと俺が潤と一緒に食べたいだけなんだよねー。女性を振り払う為に利用できるかなって。」
この人、最低だ。
財布を届けたのは俺だぞ！
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
