1. ふわふわ ページ1
Mside
俺、松本潤。
現在、三つ星の付くイタリアンレストランでシェフとして働いているが、いずれ、独立して俺の店を開く野望を抱く男だ。
こう胸を張って言っているものの、未だに実現できてない。
そんな俺はレストランから少し離れた場所にある比較的、家賃の安いアパート、その名も
そして、俺の隣人、252号室。
名はホストかと疑うくらいいけてる。
最初は源氏名かと疑った。
櫻井翔、これが本名なのだ。
彼の素姓は大手の雑誌の編集者。
役職は凄いけど、仕事以外、彼は廃人だ。今まで俺無しでよく一人で生きてこれたなと感心できるくらいの廃人。
家事は料理と掃除は出来ない。
辛うじて、洗濯が出来るくらい。
頭は良いが、何処か抜けているというか、彼の同僚曰く仕事の時のオーラとの差が凄いらしい。
だから、俺がお世話している。
そもそも、彼と知り合い、世話するきっかけが大家さんだ。
確か…。
『ねぇ、潤ちゃん。鍵渡すから、252号室の翔ちゃん、生きてるか確認してきてくれない？最近、姿を見せないのよー。』
なんて大家さんに頼まれて、そこから親しくなって彼の世話を焼いているようなものだ。
てか、素ではダメダメなのに、よく会社をクビにならないな、翔さん。
いや、感心している場合ではない。
仕事帰り、彼の部屋に向かうのが日課だ。
今日こそはちゃんとご飯を食べていると良いのだが…いや、彼が俺無しでご飯食べるなんて明日は嵐が来ると言っても過言ではないレベルだから、期待するのはやめよう。
合鍵は持っているが、一応、備え付けのよくあるインターホンを鳴らしてみる。
あれ？
ドアを開ける気配すらない。
仕方ない。
合鍵を使って入らせてもらおう。
「翔さん、今日は焼きそばにするんだけど…。」
って、机に突っ伏してるよ。
その周りには大量の資料がばらまかれている。
オイオイ、昨日、掃除したばかりだぞ。
何でこんなに汚くなる？
ある意味、才能ってか？
「翔さん、翔さん。」
「…ん、おっ…おかえり…潤。」
「パソコンの電源も付けっ放しだし、布団もかけずに寝たら、風邪、引くよ？」
「そろそろ、潤が帰ってくるかなって思って、作業を止めたら…記憶無い。その…気づいたら…寝ちゃっていたみたい。」
「無自覚かよ…。相変わらず、寝起きの翔さん、いつもの二倍、発言がふわふわしてる。」
「うーん、いつも、ありがとうね、潤。」
そう言って誤魔化す。
翔さんはズルい人。
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作者名：山風無限 | 作成日時：2019年7月26日 1時
