三人でトリップでございますか…【文豪ストレイドッグス】 (ページ49)

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第二十一話　あーあーあーページ49

「我等を赦せ、光輪の戦天使！さもなくばその姿を下界に顕せ！僕の命など惜しくはない、だから裁きを代行するのならばまず僕の胸を貫け！かつて僕のものであったその剣で！」

　舞台の上で、貫頭衣を着た青年が慟哭する。
　今は主人公が天に向かって吠え、殺戮の天使に向かって訴えかける場面である。

　乃風は周りに気を配りながらも、そんな舞台を少しばかり冷めたように眺めていた。

　……「殺人」が実行されるのは此の演劇中。俺たちの仕事はそれを観察すること。
　……具体的には多分……。

　乃風にはこの事件の全貌、その半分が理解出来て居た。
　犯人が誰で、動機はなにで、その方法はどんなもので、そしてどのタイミングでそれが行われるのか。
　「卓越した推理能力」を持つ彼の脳は、もう既に此処までの特定に至っていたのだ。

　……でも、何の目的で、誰がこの「殺人」に乗っかってんのか、それは判らない。

　引っかかるところは無いことも無かった。だがどうにも、頭の中でその違和感をつかみ取る事が出来ない。

　……それとも。

　主人公の役者、村上青年が両手を掲げたあたりで、乃風の頭には、あの太陽のような笑顔の名探偵の言葉が蘇った。

『先に行って、観客の動きを見ていて！』

　その瞬間、観客の動きさえ見て居れば、解るとでも言うのだろうか。
　自分の違和感の正体が、その瞬間に明らかになるとでも言うのだろうか。

　乃風は一層強く舞台を見詰めた。
　そろそろ舞台を注視しておかねばならない。台本の通りなら、このタイミングの筈だ。

「……の罪を！天界へと至る鍵を見つけ、辺獄の氷河よりも醜いその嫉妬を白日の下に曝っ」

　
　果たして、その瞬間は訪れた。

　村上青年の胸から、白銀の剣が突き出ていた。

　まるで、何か見えない――そう、殺戮の天使に、後ろから突き刺されたかのように。

　貫頭衣に赤色が滲みだす、その瞬間剣は引き抜かれ、ごぼりと更なる赤色が流れた。

　村上青年が、倒れた。