第十二話 へ? は? あんたまさか…! ページ29
江戸川が江川女史に嫌われ、江戸川と山辺除く三人が「これじゃあ仕事が長続きしないわけだ」と頭を抱えながら納得したのち、一行は役者一人一人を訪ねることにした。
護衛のため、一体どこで誰が一人になるのかを確認する為である。
一人目にこの劇の主役を演じる俳優に会いに行くことにして、一行が廊下を歩いていた時。
「すみません、お手洗いを借りてきても良いですか?」
山辺が福沢に聞いた。それを聞いて上木が便乗する。
「あ、なら私も」
「ああ、問題ない。場所はわかるか?」
「はい、先程見かけましたので」
「直ぐに合流します」そう言って女子組は男子組(男性一人+少年二人)と別れて行った。
「あの、真さん…」
用を終え、他のメンバーに合流しようと二人が廊下を歩いていると、上木が山辺に話し掛けた。
正直聞きたい事やら確認したい事やらが沢山有った。聞ききれない位有った。
「はい。何でしょう?」
山辺は相変わらずいい笑顔で返した。
表情筋疲れないのかな?
と上木は思ったが、今聞くことじゃないと堪える。
「えっと…江戸川さんと福沢さんは……その、主要キャラなのですか?」
分かりにくいので訳すが、端的に言えば「文ストの登場人物なのか?」と云う意味である。
この三人はお互い分かりにくく話しても通じてしまうので、一々訳さなきゃいけないのが面倒くさい。(作者の声)
唐突に失礼した。話を戻す。
上木がこう聞くのも、山辺が登場人物や物語を二人に話していないからである。
決して話すのが面倒臭いわけではない。寧ろ話し出したら数時間余裕でマシンガントークを繰り出す自信がある。
理由は一つ、キャラに違和感を持たせず出会うなら、事前情報は無い方が善いと判断したからである。
事前情報があると、どうしても動作に違和感が出てしまうのだ。
因みに山辺は逆に違和感がカンストしているので問題ない。只の変人にしか見えないのだから。
「ええ、お察しの通り」
嗚呼―やっぱり―。
と上木は思った。
ならば朝からの山辺の態度にも納得がいく。山辺はまず文ストのファンだ、好きな作品の登場人物と会ったらそれは興奮して態度が変にもなるだろう。自分も歴史人物に会ったらこうなるかも……いや流石にこうは成らないわ。
此処迄考えたところで、上木は他に聞きたかったことを聞いた。
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作者名:ミキノ・乃 | 作成日時:2020年6月19日 14時