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一人だけが善哉を爆食いしている異様な雰囲気の中、先程から一人だけニコニコと笑っていた山辺が口を開いた。
「江戸川さん、そのお餅なんですけど__」
食べないともったいないですよ、とでも言ってくれるのかと上木は期待した、が。
「食べないのなら、私が食べても善いですか?」
……いや間接キッスっ!!!!!
と上木は思った。
こういうのはときめき展開でお決まりの出来事だ。其れを今朝逢ったばかりの少年としていいのか?
というか気にしてください真さーん!! そんなお母さんが子供の残したものを片付けるようなノリでして善いことじゃないですよー!?
またもや上木は一人心の中で叫ぶが、通じることは無い。
一方、山辺の発言に対し江戸川は、
「別にいいよ、どうせ僕食べないし」
またもやけろりと答えた。
けろりと答えるな! 少女漫画的展開だぞ、普通其処赤面してワタワタするところでしょうが!
だが悲しいかな、二人は全く気付かない、そして気にしていない。
山辺は「では失礼して」 なんて言って残された餅の入った茶碗を自分の方に引き寄せている。
此れは親友としてとめるべきでは?
そう思った上木は、向かい側に居る山辺に手を伸ばした。
「ま、真さ」
真さん、ちょっと待って。
そう言おうとするが、山辺は上木の手が届く前、更に上木の台詞が終わる前に__
_何の躊躇いもなく餅を口に運んだ。
嗚呼もう、二人が気にしてないのなら、良いか…。
上木は、もう諦めた。
「あれ、リコ、手なんて伸ばして如何したのですか?」
「いえなんでも、えっと、もう善いんです。はい。」
「? そうですか。あ、リコもお餅食べたかったので?」
「違います要りませんごゆっくりどうぞ」
「?」
「ねえところで君、山辺だっけ?」
「はいそうです。どうしました江戸川さん。」
「君僕の残した餅食べてるじゃない、それってさ_」
お?
「おいしい? 僕甘くないから残したんだよ? おいしくない部分残したのになんで態々食べるの?」
「だってもったいないじゃないですか。それにお餅もよく噛めば甘いんですよ。それにお腹すいてるのでこれだけでも結構おいしいです」
「ああそう、まあ好き好きだけどさ」
「……はあ」
「リコ、ため息なんてついて如何しました?」
もうお前ら勝手にしろ。
と上木は真面目に思った。
第九話 もう帰りたいんですけど……→←第八話 さっきまでのシリアス展開は何処に行ったよ!
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作者名:ミキノ・乃 | 作成日時:2020年6月19日 14時