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 見た()的にとてとてという効果音が付くような走り方の地蔵だが、実際はどしどしと床が悲鳴を上げるほどの重さを有している。特に床の悲鳴を気にする様子もなく、目的の人物の名前を呼んでた。

「さーわこはーん。あーそーぼー」
「はーぁーいー」

 この発音といい、振りといい。思い出されるは某有名な映画のとあるシーン。ノリ良く返してくれる沢子はお茶目なところもあるようだ。

「どうしましたか、たたり地蔵さん」

 ひょっこりと現れた沢子にかくかくじかじかと、何か依頼を受けたい旨を伝える地蔵。
 それでしたらと、身を屈めて自身の端末を地蔵に見せる沢子。
 内容は三つ。Dランクの"空き部屋の気配"、Cランクの"深夜の高速道路で"、Bランクの"消えた藁人形"。
 Cランクに位置付けされている地蔵にとって、無難に解決できるものは"空き部屋の気配"か"深夜の高速道路で"の二つ。加えて報酬が出る方は"空き部屋の気配"。ならばどちらを取るかなど、考えなくてもわかるだろう。

「沢子はん、自分このDランクの空き部屋の気配を受けますわ」
「わかりました。地図とその部屋の鍵は明日の朝にお渡しいたします」
「堪忍な沢子はん」

 大和撫子さながらの笑みを携えた沢子に相も変わらず「べっぴんさんや……」とこぼす地蔵。よほど沢子の容姿を気に入っている様子。

「まぁ、ぽぽぽぽ……」

 たまに変な笑い方もするが、それも一つの個性ゆえ。ついでにいえば美人がやればなんでも良く見えるという謎のエフェクトによってそれは受け入れられているに違いない。
 照れたように笑う沢子に、火が付いたかのように褒め始める地蔵であったが突然沢子の持つスマホが鳴り出す。

「ちょっと失礼しますね、たたり地蔵さん」
「気にせんといて」

 画面を見てそのまま通話のためにスワイプさせた沢子。少し聞いていたがどうやら依頼の内容らしい。ジェスチャーで部屋に戻る旨を伝える地蔵に対して、沢子は軽く会釈をしてから会話に集中し始めた。
 そろりそろりと足音を立てないようにするが哀しかな、自身の重みによって床は変わらず悲鳴をあげている。ぎちぎちと軋む床の音と共に当てがわれた部屋に戻れば倒れている大人が一人。

「……何してますの景はん」
「いやぁ……なんていうか、えーっと……燃料不足、でね、はい……」

 良い年した大人が不摂生とはいったいどういうものなのか。
 呆れた様子の地蔵は再び沢子の元へと戻ったのであった。

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2021年7月21日 17時

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