【路地裏の百物語】浮世の沙汰は諸行無常【派生作品】 (ページ44)

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　話を聞いただけでは判断できかねる。
　あくまで今までの情報は山畑が自身の目で見て感じた主観的な物事でしかない。先入観を持ってその老人を見て対処することは、危険行為に当たる。Ｄランク任務のため命を落とすことはないだろうが、それでも下手をすれば四肢の一本や二本消え去る可能性もなきにしもあらず、だ。

「とりあえず、その四番ホームへ向かいましょか」
「わかった」

　そのまま歩き出そうとする山畑に、地蔵は彼を呼ぶ。

「……あと、一人で歩けるんでこの手ぇ離してもらえると助かります」

　己の手を掴んだままの山畑に地蔵は地蔵は見上げる。対して山畑はどうしてだと、不思議な様子。
　理由としては。

「大きな駅じゃないが、はぐれたら危ないだろ？」

　とのこと。

「いや自分、見た目こんなんですけどあんさんのお婆さんよりずっと歳食ってるんですよ？そんな幼子みたいに勝手な行動しませんよ」

　見た目こそは幼いが、実年齢は地蔵自身忘れてしまったが結構な御高齢とだけ言っておこうか。加えて最近流行り、かどうかは別問題だがショタジジイに属する地蔵。ついでに人ならざるものというオプション付き。
　設定盛り過ぎというツッコミが聞こえたかもしれないがそれはそれとして話を戻そう。
　山畑はそっと地蔵の右手を握っている自身の右手とは反対の手でスキニーのポケットからとあるものを取り出す。

「……飴いる？」
「いる！」

　差し出したものは飴である。駄菓子屋で十円や二十円と安価な金額でよく見かけるサイダー味のそれ。満面の笑みで受け取った地蔵だが、直ぐにはっとした。

「い、いや、これはちゃうんです。つ、つい関西人の性(さが)が働いただけであって、ちゃうんですッ」

　弁明を計るが悲しいことにそれは説得力を持たない。むしろ、大人ぶりたい子供の言い訳としか聞こえないし、見えない。
　生暖かい目になった山畑に地蔵は懸命に自身は子供ではないとは説明しているが、はたして自身で墓穴を掘っていることに果たして気付いているのかどうなのか。

「いやほんま、自分そんな誰かと手ぇとか繋がないとあかん歳ちゃうんですってば！」
「……飴、もう一個いる？」
「いる！ ……はっ！」

　電車がホームに到着するアナウンスが流れるなか、膝から崩れ落ちた地蔵。だがしかし、ちゃっかりと飴玉の袋二つを握り締めている辺り強(したた)かと言うべき。