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電車を乗り継ぎ指定の駅に到着した地蔵はベンチにて依頼人がくるのを待っていた。時刻は電子案内板に表示されている時計から察するに、16時になる10分前。
ホームには学生やサラリーマンらしき人物がちらほらと電車がくるのを待っていた。ほぼ全員が手に持つスマホに視線を落としており、一昔前の感性がある地蔵からしてはやや異様だと思えるだろう。中には小さなテレビぐらいの大きさのスマホを持ってゲームを楽しむ人もいるではないか。あれは落としたら悲惨なことになるに違いない、と地蔵は思うのである。
ぷらぷらと短い足をぶらつかせてぼんやりと行き交う人々を眺めていれば真っ直ぐ地蔵の方へと向かってくる青年が一人いた。
「八道さんが言ってた人って、君？」
ベンチに座る地蔵の前に立ったのは、今時の格好をした青年だった。身長は高め、おそらく180センチメートルは超えているだろう。格好は特別おしゃれという訳でないが、もっさりとしている訳ではない。あぁ、だが、強いていうなら少し色素が薄めな髪がもっさりとしているとあげようか。
「せやで」
ぴょん、と勢いよくベンチから降りた地蔵は遥か上にある青年の顔を見上げて、短い右手を差し出すように青年に向けて出した。
「自分沢子さんから聞いてこの依頼をこなす、たたり地蔵いいます。よろしゅうに」
目を瞬く青年は、少し考えたのちに差し出されたその小さな手を握った。
「八道さんに依頼を頼んだ
「山畑はんな」
握り返した地蔵ははっと気付く。
「山と川！」
「はい？」
「いや、なんでもんありまへん」
山と言えば、川。という定番の合言葉を思い出した地蔵。一昔古いのは致し方ないだろう。
こほん、と謎の咳払いをした地蔵は依頼内容に確認をする。
「それで自分、この駅のホームに現れる老人の正体が知りたいって内容の依頼で合ってます？」
「あぁ。いつもこの駅で俺は乗り換えをするんだけど、毎回その老人はホームを歩いている女性に"アカネさんですか？"って尋ねているんだよ」
山畑曰く、何度かその老人に話してみたが声は聞こえていないのか反応がないとのこと。
「なるほど……」
「その老人ってやっぱりこの世ならざる者なのか？」
「うーん、それは自分が一回見てみんとなんとも言えませんなぁ……」
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作者名：翔べないペンギン | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時：2021年7月21日 17時
