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此度の戦いはたけのこの村側の勝利で納めた第何万回目かによる、仁義なきたけのこバーサスきのこ合戦。
割引券によって数十円の支払いだけをした地蔵は古びたリュックサックにたけのこの村を入れてボロ家までの帰路に付いていた。
レジ袋の有料化に伴ってYマートも大きな袋は五円、小さな袋は三円と、有料になってしまった。もちろん節約のため、地蔵もレジ袋はいらない旨を提示してそのまま頂戴したのは考えずとも分かるだろう。
先週同様、今日の天気は晴れ。夕立の心配もあるため傘があると安心だと、朝に見たテレビのお天気キャスターのお姉さんが言っていた。
コーティングされたチョコレートが溶けないようにしなければならないため、地蔵は早足でボロ家まで戻らなければならなかった。一度無残に溶けて悲惨な思いをした経験がある地蔵。ふにゃふにゃを通り越してドロドロのそれを舐めとった記憶はそこそこ新しい。しかしチョコレートは美味しいはずなのに何故か塩っ辛い味がしたのはどうしてだったか。
トコトコと、若干ひび割れが目立つアスファルトを歩いていけば酷く冬を彷彿させる少女が少し先を歩いているではないか。
「
その背に地蔵が声を掛けると少女は立ち止まり振り返った。
「……あ、お地蔵さん、こんにちは」
「こんにちは」
地蔵に挨拶をしている少女は地蔵と同じ怪異である。名を
少し小走りで絲の元へとたどり着いた地蔵は小首を傾げた。
「絲はん、駅から出られてどうされたんです?」
「……いと、買いものの途中なの。ヴィシソワーズが飲みたくなって……」
「ゔぃしそ……? なんやハイカラな名前ですな。なんですの、それ?」
「えっとね、じゃがいものポタージュスープなの。冷たくて、とってもおいしいの……」
「じゃがいものポタージュスープ……コンポタの親戚か何かです?」
地蔵の頭にはコーンポタージュに似た何かが浮かび上がっていた。何故かほくほくしたフライドポテトがコーンポタージュの上に乗っかっているという謎料理なのだが。
「ううん、違うよ。コーンポタージュは暖かいけど、……ヴィシソワーズは冷たいの」
「冷たい汁物、なんです?」
「うん。そう、だよ……」
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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/
作成日時:2021年7月21日 17時