【路地裏の百物語】浮世の沙汰は諸行無常【派生作品】 (ページ16)

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「達也はん、自分ほんまに重いんで自分で歩きますで？」
「これくらい、平気、ッだ」
「……うーん、なんや。あとで湿布貼りましょな達也はん」

　鍛えていたゆえに達也は担ぎ上げ、そして小走りで向かうことが可能なのだがこの地蔵、見た目に反して物凄く重い。中身が石ゆえに当たり前のことだが。
　ゆえに担いでいる達也の足元はミシミシと酷い軋みが聞こえてくる。本当に床が抜けるかもしれない程の軋みだが、幸運体質である達也のお陰かその心配はなく。ぷらぷらと達也の肩の上で揺られながら、地蔵は声が聞こえる場所へと辿り付けたのだった。

「堪忍な達也はん」
「ど、いたしまし、て」

　膝に手を付いて軽く息を切らしている達也の肩から降りた地蔵。甲高い悲鳴が床からこぼれ出ていたが抜けることは辛うじてなかったようで。地蔵は背を伸ばして彼の背中を撫でた。

「もう平気だ地蔵、ありがとう」
「こっちこそおおきに」

　にへらと笑う地蔵と穏やかに笑う達也だったが「どなたかいませんかー」という沢子の声に、二人は襖を見た。そこは沢子がよく依頼の振り分け等で使用することが多い、所謂(いわゆる)執務室のような場所の前。
　そっと襖を開けると、紙が十数枚流れ出てきた。

「紙？」

　達也が一枚拾って内容に目を通したところ、今まで解決した怪異の内容が書かれていた。手書きなのか、綺麗な文字がどの紙にも綴られている。

「どなたかい」
「沢子さん、自分おりますよ？」
「！そのお声はたたり地蔵さん」
「俺もいるよ」
「犬飼さんもいらっしゃるのですね、よかった」

　入ってきていいと、二人に入室許可を出されたために地蔵も達也も部屋に入って、固まった。

「……」
「……」

　部屋は床一面真っ白だった。いや違う、紙が無造作に敷き詰められていた。よくみればそれは全て怪異に対する報告書だった。そして山のように盛り上がっている部分から、沢子の声が聞こえてくるではないか。

「たたり地蔵さん、犬飼さん。お手数なのですが、わたくしをここから引っ張り出していただけないでしょうか？報告書の山を崩してしまって、動けなくなってしまったのです」

　何があってこの大量の紙の下敷きになったのかは不明だが、極度のドジっ子を発揮させたことは間違いないだろう。

「……気張りましょか達也はん。男を見せる時や」
「とりあえず、発掘するか」